Episoder
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自分にないものを持って生まれているのを見れば、誰しもうらやましく思うものです。しかし持って生まれたばかりに、思いもかけぬ運命に導かれてしまうこともあるようです。美しい声で鳴くこまどりは、その可憐さゆえに大切なものを失ってしまいます。
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さまざまな話が木の葉のように重なり合うなかで、太宰らしい言の葉が横溢している不思議で魅力的な短編です。ワードセンスに優れた太宰の代名詞ともいえるフレーズからはじまります。
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Mangler du episoder?
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亀井勝一郎は文芸評論や「大和古寺風物誌」などの文明批評で有名ですが、人生論や恋愛論のベストセラーも次々に生み出しました。戦後を迎えてもなお、日本には家族が絶対的な支配権を持つ家父長制の価値観が色濃く残っていました。それは近代的な自我を持った個人とは相いれない部分も多く、家族観に惑う時代にその在り方を見つめなおした一編です。
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自らが不道徳や間違いを行ったにも拘らず、それを正しく罰せられることなくまぬがれたあとに、人にはどのような感情が沸き上がるのでしょうか。社会的に認められた人物であるほど、その感情は心の底に澱のように溜まっていくようです。
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ひょっとこの表情はかまどの火を吹いている男の顔を題材にしているとも言われ、火吹き男が語源とも言われます。舞楽に登場すると、間抜けで助平でどこかとぼけた味があり、滑稽なキャラクターで周囲を明るくします。心に屈託を抱えながらも、人前ではそれを見せまいと、ひょっとこを演じて生きた男の話です。
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妻がありながら外で遊び歩いている男が、妻を騙すために手の込んだ悪戯を仕掛けます。続けるうちに最初の思惑とは違った心境の変化が起こり、自分自身が捻じれた感情にさいなまれていきます。江戸川乱歩らしい心理小説です。
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岡崎城の天守閣に亡霊が現れるという話が、一部のものの間でまことしやかに広がっていきます。その真偽を確かめられるものがいないなか、家老次席の拝郷弥左衛門は娘婿の乙次郎に、噂の正体を突き止めるように命じます。
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33歳で早逝した織田作之助は、その短い人生を予期していたかのように、次々と創作に取り組み多くの長短編を残した作家でした。この短編は、その量産型の姿勢について、周囲から指弾されていた自分自身をモデルにしたといわれています。
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盟友の正岡子規の食い意地について尋ねられた夏目漱石は、思い出すままに語り出します。諧謔精神でつながった二人ですから、気取りや持ち上げるなど野暮なことはせずに、飄々と子規の魅力を浮き上がらせます。二人の気のおけない関係がうらやましくなります。
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一般の人々もコンピューターを認識しはじめた1960年代は、科学技術の時代であり、情報化社会が盛んに語られた時代でもありました。この時代に発表された小説ですが、主人公の設定や描かれている人間と先端技術の関係は、現代に置き換えても通じます。まだパソコンのデータが内蔵記憶ではなく、パンチカードであったころが舞台です。
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薩摩の藩主が江戸から連れてきたのは、華やかな経歴を持ち、如才なく、見た目もいい若侍。藩では名門の家柄に育ち、小身ながらも武芸に秀でた俊英と一目置かれている慶之助は、寡黙で不愛想でいつもむっつり。この二人がつかぬことから対決することになる。それぞれの武士道が勝負を分かつ。
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人の心にいつまでも残るキズは、他人から与えられるものではなく、自分自身のあさましい行動の方が消えることなく深く残ります。世間には知られることがないからこそ、内に底にと沈んで澱のようにたまっていきます。太宰ならではの人間観が垣間見えるスケッチです。
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若さにまかせて家を飛び出した三度の経験を回想します。成長するにつれて、その理由は違っており、それぞれ微妙に違った結末を招きます。家出という経験を通して、若者の成長を考えさせられる短編です。
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強盗を犯して捕まった犯人が助かりたいばかりに、若い警官を殺めて逃走します。その犯人がついに見つかり、群衆の中を連行されていく場に、小泉八雲はいました。そこで起きた出来事に、八雲は日本人ならではの心情と反応をみます。
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東京駅に降り立った女たちの荷物を運ぶ赤帽がいる。その赤帽はすべてが「3」にまつわるタイミングで現れる。あまりにも揃い過ぎていることに気が付いた赤帽仲間は、その理由が気になって仕方がない。たまらず本人に聞くと、それなりの理由を説明されたのだが‥‥。
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貧しい農家の少年は毎日仕事に追われながら、遠い彼方に見える金色に輝く窓の家を見て、いつも思いを巡らします。珍しく休んでいいといわれた日、少年はその窓を見に行くことにしました。少年がそこで出会い、見つけたものはなんだったのでしょうか。
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世の中には、豊かな暮らしを送りながらも、貧しい人々の苦しみや痛みを我がことのように受け止められる人がいます。しかし、いつも慈悲深く施しをいとわない人にでも、人を疑う気持ちが芽生えることはあります。真実はどこにあったのでしょうか。
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「道程」は高名な詩ですが、教科書等に掲載されて多くの人が口ずさんでいたのは短く書き直されたもので、発表当初の長かったものは意外に知られていません。当時の美術界の古い体質に挑むとともに、千恵子との新生活が始まろうとした光太郎の前進する気持ちを表した詩でした。その全文です。
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ある時、「幸福」が人々の家を訪ね歩きます。「幸福」が訪れれば誰しもが喜んで受けいれそうなものですが、そうはなりません。「幸福」が「幸福」の姿で訪れるとは限らないからです。「幸福」がもたらされた家はどんな家だったのでしょうか。
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伝承話は人々の口伝えに語り継がれるうちに、脚色され面白く誇張され、時にはバカバカしいほどの大ボラに変化することがあります。得てしてそのような話の方が面白がられ、長く残ったりもします。手練れの菊池寛が、大力にまつわるそのような話をまとめました。
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