Bölümler
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面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。
今回は、プリズナー・トレーニングについて語りました。
ブックカタリストの配信回数も3桁に到達し、気分的には「ブックカタリスト2.0」というところ。
そのスタートに(個人的にはとてもふさわしいと思っている)本を運良くいいタイミングで紹介することが出来たな、と感じています。
ブックカタリストでこれまで紹介してきた本は大半が「真面目な本」だったんですが、ブックカタリストのテーマは「面白かった本について語るPoadcast」であり、それがマジメっぽい本であるとか、むずかしそうな本、賢そうな本であると言うこととはなんの関係性もないのです。
とは言え、100回も回数を重ねていると、どうしても方向性が固まってきてしまい、そこから外れた本を選びづらくなってしまうと言うのもまた事実。
101回の今回は、そこを打破する為にもいつもとはちょっと違う感じである、ということが重要だと感じていたのです。
とは言え、個人的には内容と言うか本編のノリ自体は基本的にほぼいつもと同じ感じにはなっていると思うし、なによりも今回の本はこれまでの「運動」「ダイエット」「練習」などといったテーマで紹介してきたブックカタリストの本の「実践編」みたいな見方も出来るわけです。
なによりも、実際にごりゅごはこの本を多いに楽しんで読めているし、読み終えてからも常に手元ですぐに読めるようにしていて、筋トレを行う前や後など、折りに触れてしょっちゅう何回も読み返しています。
「運動しないとなー」みたいな感覚はもう10年以上も持っていて、これまではずっと「健康の為にしゃーないから運動する」でした。
これが今はついに(大人になってから初めて?)楽しくて、やりたくて、自分自身で積極的に筋トレをする、ということができるようになりました。
諦めない気持ちというのは、わりと大事なのかもしれない。
今回出てきた本はこちらで紹介しています。
📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish
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記念すべき第百回は、いつもと趣向を変えて二人の読書の略歴を語ってみます。
二人が紹介した本は
……。
出てきた本をぜんぶ列挙しようとしたんですが、あまりに数が多くなったのであきらめました。
倉下は赤川次郎『三毛猫ホームズの推理』からスタートするミステリ系統を出発に、神坂一『スレイヤーズ!』から始まるライトノベル・SF・異世界転生もの系統、野口悠紀雄 『「超」勉強法』から始まるノウハウ・自己啓発系統、村上春樹『ねじまき鳥クロニクル』から始まる文学・ハードボイルド系統が、青年期の読書を構成していました。
事前のメモではそれくらいでだいたいカバーできていると思ったのですが、大学時代はプログラミング言語の本を読み漁っていましたし、コンビニ店長時代では経営学・経済学の本にも手を伸ばしていました。これらも系統ではあるでしょう。かなり多岐にわたっています。
ごりゅごさんはむしろもっと限定的で『三国志』ものを契機に歴史物を中心に読んでおられて、途中潜伏期間があった後、Obsidianによるノーティング技術の向上およびブックカタリストのスタートを契機にして再び読書欲が盛り上がってきたというお話でした。
その一つの契機に「インターネットが未来をワクワクさせてくれるというビジョンがあった」という話は非常に印象的だと感じます。人を本を読む気にさせるものは、やはりそういうワクワク感なのでしょう。「知的好奇心」と言ってしまうとあまりにも漠然としますが、読書というのは平静・冷静な知的活動ではなく、ある種のワクワク感に駆動されるドライブなのだと思います。
読書に歴史あり
そんな風にそれぞれの人にはそれぞれの読書の経歴があります。歴史と呼んでもよいでしょう。
私が今、一冊の本と対峙するとき、その背後には常に私の歴史が蠢いています。その本を読みたいと思うかどうか、読んだ後どう評価するか。そうした反応は歴史に由来するわけです。
だから同じ本でも読みたいと思うかどうか、面白いと思うかどうかは人によって違ってきます。個性による違いというよりも、歴史による違いなのです(あるいは、個性とはそれぞれの人の歴史である、とも言えるでしょう)。
広義で言えば、読書はたしかに「インプット」な活動です。でも、その表現では「歴史」の感覚が立ち上がってきません。均質的ではなく、個別的な活動。一度きりではなく、連続性のなかにある活動。それが読書です。
だから、「本を読むことは、本を読み続けることである」なんてことが言えるかもしれません。
ぜんぜん関係ないですが
二人の読書の歩みはまったく違っているのに、人生の歩み方においてすごく重なる部分があることが今回わかりました。
しかし、考えてみれば、本当になにもかもがまったく違っているならば、こうして二人でポッドキャストをしていることはなかったでしょう(政府が命令して無作為に選んだ二人にポッドキャスト運営を強制しないかぎりは)。重なる部分があるからこそ、活動を同じくしている。でも、多くの部分で違いがある。
たぶん組み合わせというのは、そういう感じのときうまくいくんじゃないかな、なんて思います。
皆さんも自身の読書のヒストリーを振り返り、自分のヒストリーで語ってみてはいかがでしょうか。
ご意見・ご感想はコメントおよびTwitter(現X)、Blueskyのハッシュタグ#ブックカタリストにてお待ちしております。
では、今後もブックカタリストをよろしくお願いします。サポータープランへのご加入も、ご検討くださいませ。
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Eksik bölüm mü var?
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今回は「論文を書くとはどういうことか」をテーマに、論文についての二冊の本を紹介しました。
* 『論文の書きかた (ちくま学芸文庫 サ-55-1)』
* 『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』
それぞれ独自の魅力を持つ二冊です。
書誌情報
『論文の書きかた (ちくま学芸文庫 サ-55-1)』
* 著:佐藤健二
* 佐藤 健二(さとう・けんじ):1957年、群馬県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程中途退学。東京大学名誉教授。博士(社会学)。専攻は、歴史社会学、社会意識論、社会調査史、メディア文化など。著書に、『読書空間の近代』(弘文堂)、『風景の生産・風景の解法』(講談社選書メチエ)、『流言蜚語』(有信堂高文社)、『歴史社会学の作法』(岩波書店)、『社会調査史のリテラシー』など。
* 出版社:筑摩書房
* 出版日:2024/5/11)
* 目次
* 第1 章 論文とはなにか
* 第2 章 「論」と「文」の結合
* 第3 章 〈文〉で論ずることの厚み
* 第4 章 主題・問題意識・問題設定
* 第5 章 通念の切断と思考の運動
* 第6 章 観察と対話の組織化
* 第7 章 調査研究のさまざまな局面
* 第8 章 2 項対立のあしらいかた
* 第9 章 リレーショナル・データベースとしての社会
* 第10 章 「クダンの誕生」の経験をふりかえる
* 第11 章 リテラシーの発見
* 第12 章 読書空間のなかで書く
* 第13 章 コピペと引用の使いこなし
* 第14 章 見えかたをデザインする
* 第15 章 研究倫理の問題
* 第16 章 編集者として見なおす
『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』
* 著:阿部幸大
* 日本の文学研究者。筑波大学人文社会系助教(2024年時点)。北海道出身。
* 出版社:光文社
* 出版日:2024/7/24
* 目次
* 原理編
* 第1章 アーギュメントをつくる
* 第2章 アカデミックな価値をつくる
* 第3章 パラグラフをつくる
* 実践編
* 第4章 パラグラフを解析する
* 第5章 長いパラグラフをつくる
* 第6章 先行研究を引用する
* 第7章 イントロダクションにすべてを書く
* 第8章 結論する
* 発展編
* 第9章 研究と世界をつなぐ
* 第10章 研究と人生をつなぐ
* 演習編
『論文の書きかた (ちくま学芸文庫 サ-55-1)』
本書は「論文を書くとはどういうことか」をさまざまな角度から論じていく一冊で、その場しのぎに論文を書き上げるためのテクニックではなく、研究活動の一環に論文の執筆をおき、その中でいかに研究を進めるのか=論文を書くのかが検討されていきます。
重厚な論述であり、著者の思考が垣間見れる面白さもあり、話題が枝葉のように広がっていて、それらがいちいち楽しめる魅力も持ち合わせています。
個人的には「文」に注目した論考が心に残りました。自分なりにまた展開させていきたいと感じます。
『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』
きわめてテクニカルでプラクティカルな一冊。それでいて著者の熱さも伝わってきます。「まったく新しい」という看板に偽りはありません。
一冊目の本に比べると重厚な論述感は小さいものの、シャープで説得的な論考は一気に引き込まれます。でもって、アドバイスが非常に役立つ。学術寄りの知的生産を行うなら必携の一冊でしょう。
こちらも単に表面的なノウハウを提示して終わりにするのではなく、論文を書くときに必要な「頭の使い方」を提示してくれている点が魅力です。
個人的には、本編でも語ったようにアカデミックではないライティングの方向性を検討してみたいと思います。
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面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。
今回は、『ATTENTION SPAN(アテンション・スパン) デジタル時代の「集中力」の科学』について語りました。
スマホの登場によって、私たちにどんな変化が起こっているのか。
iPhoneが出たばかりの頃の自分は、それによるよい変化にしか注目していませんでしたが、最近はそこから起こる「よくないこと」にも注目するようになってきました。
特に、スマホという「最強の暇つぶしツール」を手に入れた我々は、いつのまにかほんのわずかな時間の退屈を耐えることができなくなり、結果的にこれまで以上に「退屈」という問題に悩まされるようになっている。
そんな問題意識を持って、この本を読んだ印象です。
自分が変わったなあ、と思うのは、こういう「〜について考えるためにこの本を読もう」みたいな観点で本を選ぶことができるようになった、ということです。
自分の読書力が上がったかどうかは、客観的に評価する手段はないんですが「気になってることを考えるために本を読む」ことがきちんと言語化できるようになったというのは、明確に進歩だと思います。
これは、ちゃんと他人に誇れる変化。
なんだかんだもう、100回近くもずっと本について話してたら、なにか変化はあるよね。それを身をもって体験できたことは大きいです。
ブックカタリスト100回記念イベント
というわけで、詳細はまたお送りする予定ですが、まもなく到達するブックカタリストの100回を記念して、東京のどこか(東京駅近辺の予定)で、100回到達記念イベントを行う予定です。
テーマは「ブックカタリストの語り方(仮)」
開催日は、11月17日の午後から夜にかけて。
詳細が決まり次第、またご連絡いたします!
今回出てきた本はこちらで紹介しています。 📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish
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今回はチャールズ・デュヒッグの『生産性が高い人の8つの原則 (ハヤカワ文庫NF)』を取り上げました。
いわゆる「ライフハック」な考え方がたっぷりな一冊です。
書誌情報
* 原題
* SMARTER FASTER BETTER: the secrets of being productive in Life and Business(2016/3/8)
* 単行本版
* あなたの生産性を上げる8つのアイディア 単行本 – 2017/8/30
* 著者
* チャールズ・デュヒッグ
* ジャーナリスト。イェール大学卒業後、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBA取得。「ロサンゼルス・タイムズ」「ニューヨーク・タイムズ」のライターを務め、現在は「ニューヨーカー・マガジン」その他に寄稿。2013年には「ニューヨーク・タイムズ」のリポーターのチーム・リーダーとして、ピュリッツァー賞(解説報道部門)を受賞。最初の著書『習慣の力〔新版〕』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)は「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラー・リストに3年間も留まった。第2作である本書も2016年、同リストにランクインした。
* 翻訳
* 鈴木晶
* 『愛するということ』、『猫に学ぶ――いかに良く生きるか』、『ラカンはこう読め! 』など多数。
* 出版社
* 早川書房
* 出版日
* 2024/3/13
* 目次
* 第1章 やる気を引き出す―ブートキャンプ改革、老人ホームの反乱と指令中枢
* 第2章 チームワークを築く―グーグル社の心理的安全と「サタデー・ナイト・ライブ」
* 第3章 集中力を上げる―認知のトンネル化、墜落したエールフランス機とメンタルモデルの力
* 第4章 目標を設定する―スマートゴール、ストレッチゴールと第四次中東戦争
* 第5章 人を動かす―リーン・アジャイル思考が解決した誘拐事件と信頼の文化
* 第6章 決断力を磨く―ベイズの定理で未来を予測(して、ポーカーに勝つ方法)
* 第7章 イノベーションを加速させる―アイディア・ブローカーと『アナと雪の女王』を救った創造的自暴自棄
* 第8章 データを使えるようにする―情報を知識に変える、市立学校の挑戦
* 付録―本書で述べたアイディアを実践するためのガイド
「生産性を高める」とは
インターネットの仕事術系情報では「生産性向上」や「productivity」といった言葉をよく見かけるわけですが、そのたびに私は「むむっ」と警戒フィルターを発動させます。
というのも、単にそれが「タスクをたくさんこなすこと」を意味しているのではないか、あるいは生産性向上のためのツールを使うことそのものが目的になっていないか、という懸念があるからです。
実際、一時間のうちに実行できるタスクが10から20に増えたとしても、そのタスクが効果を上げていないことは十分ありえるでしょうし、タスク以外の目を向けるべきものから目を逸らしてしまっていることもあるでしょう。はたしてそれは望ましい「改善」と言えるのでしょうか。
一方で、たしかに効果的(エフェクティブ)な状態というのはあって、メールを書こうとして、なかなか取り掛かれずに、インターネットを彷徨っている間に、新しいツールの情報を見かけて喜び勇んでダウンロードしてしまっている、という状態はあまり効果的な時間の使い方ではないとは言えるので、何一つ改善を試みようとしないというのも、それはそれで違う気がします。
本書では、「生産性を高めるのに必要なのは、今よりももっと働き、もっと汗を流すことではない」という明瞭な指針が掲げられていて、「まさにその通り」と強く感じられます。
以下のような定義も登場しますが、
* 最少の努力で、最大の報いが得られる方法を見つけること
* 体力と知力と時間をもっと効率よく用いる方法を発見すること
* ストレスと葛藤を最小限にして成功するための方法を学習すること
* 大事な他のことをすべて犠牲にすることなく、何かを達成すること
これに納得できる人もいれば、そうでない人もいるでしょう。
それでも「生産性とは、いくつかの方法を用いて正しい選択をすることである」という根本的な方向性については同意できるのではないでしょうか。
さらに言えば──本編でも語っている通り──、「正しい選択をするために、自分は有効な方法を使っている」という感覚を持つことが、人生全般にわたる「やる気」の高め方なのかもしれません。This is Lifehacks.
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面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。
今回は、人間の色覚と色について語りました。(『見たい! 聞きたい! 透明水彩! 画家と化学者が語る技法と画材』、『ひとの目、驚異の進化: 4つの凄い視覚能力があるわけ』をメイントピックにしつつ、わりとフリーで語った感じです)
お絵かきというものを始めてみて一番面白かったのは、今回のような「お絵かきをしなかったら絶対興味を持たなかったであろうこと」にも興味を持つことが出来たことです。(お絵かきをしなかったら「絵の具ってどういうものなんだろう」なんてことを考える人はまずいないですよね?)
世の中のありとあらゆることって「知ってる」と「やってる」にはとてつもなく大きな壁があって、これを乗り越えた数が多ければ多いほど、多くのことに興味関心を持てるようになるのではないか、と感じます。
で、この「知ってる」と「やってる」って、最初の一歩は本当にめちゃくちゃ小さな違いでしかないんですよね。
半歩踏み込んで、ちょっとだけ試してみる。これができるだけで、数週間、数ヶ月後には、技術だけでなく、世界の見え方にもめちゃくちゃ大きな差が生まれてくるのではないかと思います。
ごりゅごは最近世界の「色の見え方」がけっこう変わった感じがして、これまでより1段階、世界を見ることが楽しくなりました。
以下、要約です。
話題: 色覚と絵画の科学的・進化論的視点
* 色と絵画の科学的視点
* 水彩画に関する技法や画材について紹介
* 色相、彩度、明度など色の基本的な概念の説明
* 水彩絵具の化学的背景、特に顔料と染料の違いについて
* 絵具の色が変わる要因(粒子の大きさや混色)について
* 絵画における色の選択や新しい色彩の開発についての話題
* 人間の色覚と進化
* 人間の色覚が進化した背景として、食物の識別だけでなく、肌の色の変化を見分ける能力が重視された可能性
* 肌色の変化を見分けることが、コミュニケーションや社会的協調性において重要であったこと
* 四季覚異常が男性に多い理由とその進化論的説明
* 色覚の進化に伴う顔の毛の減少とその影響
* 進化論と社会的影響
* 肌色の違いが進化論的にあまり変わらないこと、しかし人間はそれを非常に敏感に感じ取ること
* 現代社会における肌色の違いが持つ社会的問題
* 人種間の肌色の違いの理解とその文化的影響について
* VRやテキストコミュニケーションにおける表情や肌色の非依存性とその可能性
今回出てきた本はこちらで紹介しています。
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今回は、『BIG THINGS どデカいことを成し遂げたヤツらはなにをしたのか?』を取り上げました。
書誌情報
* 著者:
* ベント・フリウビヤ
* 経済地理学者。オックスフォード大学第一BT教授・学科長、コペンハーゲンIT大学ヴィルム・カン・ラスムセン教授・学科長。メガプロジェクトにおける世界の第一人者
* デンマーク女王からナイトの称号を授けられた。
* 『建築家フランク・ゲーリーのプロジェクトマネジメント DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文』
* ダン・ガードナー
* カナダ在住のジャーナリスト、作家
* 『専門家の予測はサルにも劣る』
* 『超予測力 不確実な時代の先を読む10カ条』
* 翻訳:
* 櫻井祐子
* 『時間術大全――人生が本当に変わる「87の時間ワザ」』
* 『1兆ドルコーチ――シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え』
* 出版社:サンマーク出版
* 出版日:2024/4/24
* 目次
* 序章「"夢のカリフォルニア"」
* 1章 ゆっくり考え、すばやく動く
* 2章 本当にそれでいい?
* 3章 「根本」を明確にする
* 4章 ピクサー・プランニング
* 5章 「経験」のパワー
* 6章 唯一無二のつもり?
* 7章 再現的クリエイティブ
* 8章 一丸チームですばやくつくる
* 9章 スモールシング戦略
* 終章 「見事で凄いもの」を創る勝ち筋
* 主題
* 私たちはプロジェクトをどのように進め、そしていかに失敗するのか。それを回避するにはどうしたらいいか?
* ビジョンを計画に落とし込み、首尾よく実現させるには?
プロジェクトはたいていうまくいかない
本書において重要な指摘は、プロジェクトというのはたいていうまくいかず、しかもそのうちの一部は破滅的な結果を引き寄せるくらいにうまくいかない、という点です。
そうした結果を引き寄せる要因には、権力(政治)と心理バイアスの二つがあって、私が注目したのは心理バイアスの方です。
私たち人間は、最初に思いついたことを素晴らしいアイデアだと思い込み、そのアイデアについて詳細な検討も、メタな分析もすることなく「計画」を立ててしまう。
実際その「計画」は、こうなったらいいなという妄想を並べただけのものであり、その通りに実現できなことは始めから決まっている。
ここで重要なのは、計画通りに実行できない主体が悪いのではなく、そもそもの計画立案が杜撰だ、という見方です。よく、自己啓発界隈でも計画を立てても、その通りに実行できない自分に罪悪感を覚えるという話を聞きますが、その見方はひっくり返した方がよいでしょう。
実行する主体(としての自分)が悪いのではなく、実行しうる計画を立てられていない主体(としての自分)が拙いだけなのです。*そもそも日本では上意下達の感覚が強いので、こういう見方に不慣れな人が多いのかもしれません。
で、実行しうる計画というのはシミュレーションが行き届いた計画であり、それは経験を織り込んだ計画とも言え、つきつめるとタスクシュートのようなログベースの"計画"だということになるでしょう。
計画の精度を突き詰めていくと、ログになる。
これは面白い話だと思います。
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面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。
今回は、『熟達論:人はいつまでも学び、成長できる』について語りました。
この本は、「デジタルノートの熟達」というごりゅごが今ずっと考えているテーマに見事に刺さるものでした。
これは思いっきり自分に引きつけた話になるんですが、なにかを「練習して身に付ける」ことの大切さというのは、スポーツや芸術に限った話ではない、というのを改めて感じました。
最近はずっとObsidianというデジタルノートを「どうやって役立たせるか」ということばかり考えてるんですが、それも結局ある程度は練習して身に付けるしかない。
そして本で書かれていた5つの習熟の段階というのは、人になにかを教える時の手順においても参考になる本でした。
結局、大事なのは一番最初の「遊ぶ」部分。
どんな技能にしても、これができるかどうか。その部分こそが「才能」という言葉で適当に誤魔化されてしまっている、熟達の本質なんだろうな、ということを思った次第です。
以下、要約です。
* 今回の本
* 第94回のテーマ:『熟達論:人はいつまでも学び成長できる』
* タメスエ大さん著の本を取り上げる
* あいさつと前回の話題に関する余談
* 前回の余談:旅行の荷物準備の楽しさ
* Twitterでリスナーが「旅行の荷物を準備するのが楽しい」と共感
* 「過不足なく荷物が足りたことが嬉しい」
* 部屋の整理には興味がない
* パーソナリティたちの反応
* 情熱の方向性は個人差があるが、共通点も存在する
* 1000人に1人くらいは同じ趣味を持つ人がいるかもしれない
* 旅行荷物準備のコミュニティについての話
* アメリカの巨大掲示板「Reddit」にも関連するコミュニティがあるかもしれない
* 「旅行の荷物準備」に関心を持つ人はもっと多いかもしれない
* 本の紹介
* 『熟達論』は2023年7月に新潮社から出版
* タメスエ大さんの背景
* 陸上選手として400mハードルで世界選手権メダリスト
* 一般的な競技者とは異なるアプローチを取ってきた
* 引退後、競技や熟達に関する知識をまとめた本を書いた
* 本の内容とその共感部分
* 学びの方法が頭だけでなく身体でも覚えることに重点を置いている
* 自分の経験や取り組みに重なる部分が多い
* 例:アトミックシンキングやデジタルノートの使い方
* 学びの方法が学校の試験以外の生活全般に応用できる
* 熟達論の5段階
* 遊
* 主体的に行う、面白さが伴う、不規則である
* 例:設定をいじる、いろんなボタンをクリックするなど
* 最初に基本を教えるよりもまずは「遊ぶ」ことが大事
* 型
* 基本の型を覚える
* 例:片足で立つ、デイリーノートに何でも書く
* シンプルで検証が多分視されず、効果が期待されすぎない
* 型を覚えた上で試行錯誤を重ねる
* 型が良いか悪いかを見極めるポイント
* シンプルではないこと
* 検証が多分視されていること
* 効果が期待されすぎていること
* 観
* 観察し、パターンを見出す
* 量をこなすことで行動の境目やパターンが見えてくる
* 自分にとって役立つものや不要なものが分かるようになる
* 分ける行為に必ず取りこぼしがある
* 完璧を目指さず、試行錯誤を続けることが重要
* 心
* 中心を知り、それを基に冒険ができる
* 基準があることで冒険ができる
* 例:手足の動きが中心に支えられる
* 個別性が重要であり、全員に同じ最良の方法は存在しない
* 空
* 無心になり、行為のみがある状態
* 考えずに身体が勝手に動く
* 時の流れが違うように感じる
* 思い込みの中でしか思考できないことを自覚する
* 勘を尊重する
* 行為のみがある状態は仏教的なニュアンス
* その他のポイント
* 苦しいことと成果が結びつかないこと
* 効率の良い練習が重要
* 努力が報われるとは限らない
* 言われた通りにやるだけでは止まってしまう
* 自分の個別性を考慮することが大切
* 練習時間よりも集中の濃淡とリズムが大事
* 量より質が重要
* 環境を整えることも練習の一環
* 人間の特性として環境に適応する力が強い
* イメージによる動作の導き方
* 例:ハードルを飛ぶときのイメージ
* 著者の思い
* 宮本武蔵の『五輪書』の現代版を目指したい
* 競争と学びの違い
* 競争は勝ち負けがあるが、学びは全ての人に開かれている
* 学びを娯楽化することが熟達への道
* 学びを楽しむことが最も重要
今回出てきた本はこちらで紹介しています。
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今回は、以下の二冊を取り上げながら「自分」を知るための方法について考えていきます。
* 『リサーチのはじめかた ――「きみの問い」を見つけ、育て、伝える方法 (単行本)』
* 『人生のレールを外れる衝動のみつけかた (ちくまプリマー新書 453)』
書誌情報
『リサーチのはじめかた』
* 著者
* トーマス・S・マラニー
* スタンフォード大学歴史学科教授。コロンビア大学で博士号を取得。専門は中国史。邦訳書に『チャイニーズ・タイプライター』(2021年、中央公論新社)がある。BBCやLA Timesなどで研究が取り上げられるほか、Google、Microsoft、Adobeなど企業での招待講演も多数。
* クリストファー・レア
* ブリティッシュ・コロンビア大学アジア研究学科教授。コロンビア大学で博士号を取得。専門は近代中国文学。著書にChinese Film Classics, 1922-1949などがある。
* 翻訳:安原和見
* 出版社 筑摩書房
* 出版日:2023/9/1
* 目次
* 第 1 部 自 分 中 心 の 研 究 者 に な る
* 第1章 問いとは?
* 第2章 きみの問題は?
* 第3章 成功するプロジェクトを設計する
* 第 2 部 自 分 の 枠 を 超 え る
* 第4章 きみの〈問題集団〉の見つけかた
* 第5章 〈分野〉の歩きかた
* 第6章 はじめかた
『人生のレールを外れる衝動のみつけかた (ちくまプリマー新書 453)』
* 著者:谷川嘉浩
* 1990年生まれ。京都市在住の哲学者。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。現在、京都市立芸術大学美術学部デザイン科講師。哲学者ではあるが、活動は哲学に限らない。個人的な資質や哲学的なスキルを横展開し、新たな知識や技能を身につけることで、メディア論や社会学といった他分野の研究やデザインの実技教育に携わるだけでなく、ビジネスとの協働も度々行ってきた。著書に『スマホ時代の哲学――失われた孤独をめぐる冒険』(ディスカバートゥエンティワン)『鶴見俊輔の言葉と倫理――想像力、大衆文化、プラグマティズム』(人文書院)、『信仰と想像力の哲学――ジョン・デューイとアメリカ哲学の系譜』(勁草書房)。
* 出版社:筑摩書房
* 2024/4/10
* 目次
* 序 章 なぜ衝動は幽霊に似ているのか
* 第一章 衝動は何ではないか
* コラム 否定神学、他人指向型、『葬送のフリーレン』
* 第二章 衝動とは結局何ものなのか
* コラム 言語化のサンクコスト
* 第三章 どうすれば衝動が見つかるのか
* コラム 「それっぽい説明」から逃れるには
* 第四章 どのようにして衝動を生活に実装するのか
* コラム 観察力の重要性 ― 絵画観察のワークショップからOODAループまで
* 第五章 衝動にとって計画性とは何か
* コラム 社会的成功と結びつけない
* 第六章 どうすれば衝動が自己に取り憑くのか
* コラム 衝動の善悪を線引きすることはできるか
* 終 章 衝動のプラグマティズム、あるいは実験の楽しみ
本編ではそれぞれの本の序盤部分を取り上げ、自分が持つ問題意識や衝動にせまる必要や、その方法について紹介しました。
実際の本はさらに多くの内容が展開されているので、ご興味を持たれたら実際にお読みになることをお勧めします。
本編のときに使ったメモは以下からご覧いただけます。
◇ブックカタリストBC093用メモ - 倉下忠憲の発想工房
「自分」の研究
私は「ノウハウ」に興味があります。知識の具体的運用。その際に問題になるのは、「自分は何がしたいのか」「自分は何が好きなのか」という要件です。この情報がまるっと抜け落ちていたら、どのようなノウハウも効果を発揮しないでしょう。
逆にその点を理解していれば、あまたのノウハウを自分に合わせて使っていくことができますし、場合によっては新しく創造することも可能でしょう。
つまり、「ノウハウ」という情報資産を活用する上で、「自分のこと」を知っておくのは大切なわけです。そこで、そうした営みを「セルフスタディーズ」と呼び、これまでずっと考え続けてきました。そこで出会ったのが本書らです。
ポイントは、「自分」というものを既知で十全に把握している対象ではなく、むしろ流動的でつかみ所がなく、そのすべてを把握することは不可能な対象とすることです。そうした対象であるからこそ、「研究」してみようと思えるわけですから、この視点の切り替えはきわめて大切です。
どちらの本でも、ただ思弁的に「考える」のではなく、さまざまに「実験」してみること推奨しています。むしろ、私の考えでは思弁的に考えれば考えるほどわからなくなるのが「自分」という対象なのでしょう(むしろそれは現象と呼ぶべきかもしれません)。
デジタルツールにおいても、このツールで自分が何をしたいのかと考えてみても即座に答えが出るものではありません。実際にいろいろやってみることが必要です。一方で、「ただやればいい」というものでもない。いろいろやりながら、それと並行して「自分は何をしたいのか」と考えること。その中で、「うん、これはいい感じがする」「これはちょっと違うな」と自分の反応を観察していく。そういう道行きが大切なのでしょう。
でもって同じことが、生きること全般に言えると思います。
「生きることで、自分を知る」
まとめるとそんな感じになるでしょうか。
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面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。
今回は、『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』について語りました。
久しぶりに「すごく熱中してすごくしっかり読んだ」という感じの本で、決して内容が難しいわけではないけれども、考えさせられることがめちゃくちゃたくさんある本でした。
雑な説明をすれば「所有ってなんなのか」ということを通じて、社会や人間を考えていこうみたいな話、というので終ってしまいます。ただ、本に書かれている事例の多くのことが「そういう風に考えたことなかった」というものが多く、知識というよりもたくさんの新しい視点を知ることが出来た、という感覚でした。
最近のブックカタリストはわりと昔に読んだ本を、脳内で整理できてるから語る、という漢字の内容が多かったんですが、今回は「めっちゃ面白かったから熱いうちに語りたい」というタイプのもの。
どっちがよりよい方向性なのかは簡単に答えは出ないんですが、まあそういうのを好きなように、楽しんで語れてる、という姿勢が一番重要なのかな、と思うので、そこらへんはこれからも「面白いと思った本」について語っていく、という姿勢で続けていきます。
以下、要約です。
* 本の紹介と著者について
* 紹介する本は「マイン - 私たちを支配する所有のルール」
* 2024年3月に早川書房から出版
* 著者はマイケル・ヘラー、所有権に関する世界的権威
* マイケル・ヘラーは不動産法を担当する大学教授
* 以前に「グリッドロック経済」という本も執筆している
* 所有権の概念とその重要性
* 所有権のルールは根拠をめぐるストーリーの戦い
* 所有権に関する様々な事例や理論が紹介される
* 具体的な事例と議論
* 飛行機のリクライニングシート問題
* リクライニングシートを倒す権利は誰にあるのか?
* 付属の権利:アームレストのボタンがリクライニングを許可するという考え方
* 占有の権利:もともとシートが直立していた空間はその人のものであるという考え方
* 早い者勝ち:シートを倒せなくするマシーンを早く設置した人が優先される
* 航空会社の責任:座席を二重販売しているとも言える
* アメリカの裁判の傍聴権
* 行列代行業者の存在
* 裕福な人が行列に並ばずに権利を購入する問題
* 早い者勝ちが資本主義によって歪められている例
* 大学のバスケットボールの試合のチケット取り
* チケットを取るために48時間キャンプを張って並ぶ
* 忍耐力競争としての行列
* 卒業後の寄付金制度によるチケット権利の獲得
* ディズニーのファストパス制度
* 待ち時間を減らすことで収益を増やす仕組み
* ファストパスからビップツアーへの進化
* 一般の人々が納得する仕組みの工夫
* 希少な資源をうまくコントロールすることでビジネスとして成功する
* 所有権の根拠となる6つの概念
* 早い者勝ち:先に取ったものがその人のもの
* 占有:自分がいた場所だから自分のもの
* 労働の報い:自分が働いて得たものは自分のもの
* 付属しているもの:自分の所有物に付随するものも自分のもの
* 自分の体:自分の体は自分のものだと言えるかどうか
* 家族のもの:家族のものは自分のものだと言えるかどうか
* 文化や社会的信頼の影響
* 所有権の概念は文化によって異なる
* 所有権争いがいかに大変かを示す事例
* スーパーでのカートの所有感覚の例
* カーネマンの実験:戦友効果が所有権の感覚を生む
* 現代社会における所有権の問題
* 著作権や特許の問題
* 権利の複雑化とその影響
* キング牧師の「I Have a Dream」演説の著作権問題
* 映画や音楽の権利が複雑化し、創造性を阻害している例
* 基礎研究の特許問題:複数の権利が絡み合い新しい薬の開発が進まない
* ファッション業界の例:著作権が存在しないが創造性が保たれている
* Linuxやオープンソースの成功例:著作権フリーで収益を上げる
* 結論
* 所有権のルールは絶対的なものではなく、常に変わり続ける
* 著者は所有権に関する問題を解決するためのヒントを提供
* ディズニーやオープンソースのような新しいビジネスモデルが示すように、所有権の問題には多様な解決策がある
今回出てきた本はこちらで紹介しています。
📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish
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今回は二人ともが読んだ『センスの哲学』について語ります。
書誌情報&概要
* 著者:千葉雅也
* 出版社:文藝春秋
* 出版日:2024/4/5
単純に言えば、同じ出版社から出ている『勉強の哲学』の後続、より大きな流れで言えば、『勉強の哲学』『現代思想入門』に続く、哲学三部作の三作目として位置づけられます。
私(倉下)とごりゅごさんは二人ともこの三冊を読み、それぞれにしっかり影響を受けております。
ちなみに、本編でカントの三批判書の話題に触れておりますが、『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』の三冊のことで、最後の「判断力」は、感性と悟性を媒介するものであり、本書が芸術と生活を(あるいはセンスとアンチセンスを)結びつけようとする試みと構造的類似性を感じたのでした。
詳しい話は本編をどうぞ。
意味とのどう付き合うか
個人的には、本書は「意味」を巡る冒険であり、その点が作品鑑賞および作品制作に大きな影響を与える内容になっていると感じます。
私たちは(あるいは私たちの認知機構は)「意味」をフィルターとして使います。意味があるものを受容し、意味がないものを排除する。そうでもないないと、この世界には”情報”のもとになるものが多過ぎて対応できません。私たちが、生物として生き残るために必要なものを見極める機能を持っているのは当然のことで、その機能を呼ぶときに「意味」という言葉が使わるわけです。
もちろん、私たち人類は文化的に複雑でややこしいことをやっているので、直接的に生存を左右しないものたちも生成し、そこに同じように「意味」を見出します。そこで価値判断を行っている。
それ自身は悪いことではありませんし、むしろ無ければ生そのものがなりたたないでしょう(ビュリダンのロバ)。「意味なんかないんだ」という逆貼りめいた発言もよく見かけますが、その文自体が一つの「意味」を有しており、また文全体で一つの価値判断を下していることを思えば、私たちが「意味」から逃れられないことがよくわかります。
そのような意味の捕らわれから逃れるために、禅の公案というものがあるのでしょう。言葉を通して思考すると、ぜったいに答えられないといをぶつけることで、自分がそうした「意味」に捕らわれていることを自覚させる。そういう効果があるように思います。
本書でも、「意味なんかなくていいんだ」という極端な主張はなされていません。そもそも、どういう並びであっても、読み手が「意味」を生成してしまうのですから、意味ゼロの状態は作り出せないわけです。一方で、自分が「意味」だと思っているものに必要以上に捕らわれる必要はないことも説かれています。
もっと自由に(つまり、自分が先入観として持っている「意味」に捕らわれることなく)並べていくことを、そしてそれはそれで「あり」と言えることを本書は教えてくれます。
意味と出会い直す
意味フィルターの問題は、それが私たちの認識の門番の役割を果たすことで、「意味がある」ものが認識され、「意味がないもの」は除外される点です。言うまでもなく、そこでの「意味がある」ものとは、真実に属するものではなく、その時点で自分が意味があると思っている(≒判断したもの)ものに過ぎません。つまり、別のものにも「意味がある」と思える可能性はあるわけです。
しかし、意味フィルターが強く働いていると、意味がないものは除外されてしまうわけで、そうなると「意味がない」と思っていたものに新しい意味があることを発見する機会が失われます。だから、意味から半分降りるのです。意味から半分を降りて、形そのものに注目する。全体ではなくディティールに着目する。
そのような見方は、意味フィルターをバイパスする形で対象と出会うことを可能にしてれます。そこから、新しい「意味」の認識が生まれる──可能性がある。私たちは、半分意味から降りることで、意味と出会い直す可能性がある。
そうした行為においては、常に新しい意味生成の準備が為されており、同時に少しメタな視点からの「意味とは何か?」という問いかけが行われています。そうした視点の持ち方は、観賞および制作において重要な役割を果たすことでしょう。
ということを長々と考えてしまうくらいにはグレートな本です。
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今回は『人生が整うマウンティング大全』と『話が通じない相手と話をする方法――哲学者が教える不可能を可能にする対話術』を紹介しながら、コミュニケーションにおいて「話を聞く」ことの大切さを確認しました。
書誌情報などは、以下のメモページからリンクを辿ってご覧ください。
◇ブックカタリストBC090用メモ - 倉下忠憲の発想工房
相互ケアとしてのマウンティング受容
ある程度、社会的な素養(これが具体的に何を意味するのかはわかりませんが)を持っている人にしてみれば、マウンティングするのは基本的にダサい行いです。教養主義、あるいは啓蒙思想的な立場であれば、虚栄心にまみれた態度であり、ぜひとも修正しなければならない行いだとされるでしょう。
ようは、そんな風に人の上に立とうとする態度をやめて、お互いにフラットに話し合おうではないか。それがこうした考え方のベースになっているでしょうし、基本的には私もそう思います。
一方で、あまりにもその理念が強くなりすぎると、その「ゲーム」にうまく乗れない人を排斥することにもなりかねない危険性があります。それはそのまま、自分たちが気に入らない主義主張の人たちを「差別主義者」と切り捨てることが可能な”最強の道具”になってしまう可能性にもつながっていきます。
『人生が整うマウンティング大全』は、そうした理路とは違った違ったアプローチを持ちます。マウンティングしてしまうのは人間的に(あるいは動物的に)どうしようもないので、それを受け入れてお互いにマウンティングを受容しようではないか。これは人の「弱さ」を受け入れる態度であり、ケア的な行いだとも言えるでしょう。
その関係性では、単にフラットに横に並んでいるのではなく、あるときは上に立とうとするが、別のときでは下にいることを許容するという変化を持つ(平均としての)フラットさが醸成されるでしょう。
別段こうした話が本書で展開されているわけですが、「マウンティングはよくない」という態度自体が、一種のマウンティングになりかねない状態において、別の仕方でコミュニケートを考えるきっかけを与えてくれた一冊でした。
僕たちは「聞く訓練」をしていない
『話が通じない相手と話をする方法』では、めちゃくちゃ具体的なノウハウが難易度別に紹介されていて、本編ではそのごく一部、入門的内容を紹介しました。
で、「話がうまくなりたい」と思うなら、喋るテクニックよりも先にこの聞く技術・態度を身につけたほうがいいです。本当にそれくらい、私たちは聞く訓練をしてきていません。
たまたま相手が聞く訓練をしてきている人ならば、「会話」(conversation)は成り立ちますが、そうでないと一方通行の伝令が二人いるだけの状態になって、もはや会話とも呼べない何かになってしまいます。それくらい、私たちは相手の話を聞いていません。そのことは、カフェとかで繰り広げられる雑談を耳にすればよくわかります(あまり礼儀はよくありませんが)。
しかし逆に言うと、日常のやりとりは相手の言うことを真剣に聞いていなくても成立するものです。そこでは相手と場や空間を共有し、敵対的な意志を持っていないという最低限のことさえ表明すれば、あとは何を言ってもOKなのです。私たち人間はとてもファジーに意思疎通している。
だからこそ、きちんと聞くことができないのです。聞かなくても大丈夫だから、真剣に訓練されることがない。でもって、そうした日常的な「やりとり」が会話のすべてだと思ってしまう。
今この文章も、かなり伝令的になっているな〜という感じがふつふつと湧いてきました。そんな感じでついつい伝令的になってしまう(あるいはマウンティングしようとしてしまう)人間性を前提として受け入れて、じゃあどうしたらいいのかを考え、対策をとることが「人間的」な振るまいなのだろうなと思います。
一つの指摘
本編の中で、ごりゅごさんが「それって前回の話とつながりますよね。つまり何かを学ぶときの姿勢と同じ」という旨の指摘をしてくださりました。この指摘が非常に心に残って、今もまだそのことについて考えています。
何かを学習するときには、興味・好奇心を持つことがまず大切であり、人の話を真剣に聞く場合もそれが重要である。
これは会話というものが「お互いに学び合う場」(共同的な学習)であるとして捉えるならば必然的に生まれる共通性ではあるでしょう。
それを踏まえた上で、学習とは学習対象との「コミュニケーションである」という逆向きの方向からも話が組み立てられそうです。
そうすると、一見異なる二つの要素(学習とコミュニケーション)を下位項目に含む、一つ上の階層について考えられることができるかもしれません。実にワクワクしてきますね。
こんな感じで、私がごりゅごさんに本の内容を紹介しているのに、学んでいるのは(変化しているのは)私の考えの方、というのが開かれた会話の面白さです。
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面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。
今回は、『たいていのことは20時間で習得できる 忙しい人のための超速スキル獲得術』
と『成功する練習の法則 最高の成果を引き出す42のルール (日本経済新聞出版)』
を踏まえた「スキルを手に入れるというマインド」について語りました。
今回は「自分の体験を整理するために読んだ本を土台にして語る」という感じの内容を意識しました。
ごりゅごの今年のブックカタリストのテーマ「つなげる」と絡めて言うのであれば、これまでの自分の人生と、読んだ本をつなげて考えてみる、という感じでしょうか。
この2〜3年、おそらく自分が40代になってから、自分の考え方や価値観みたいなものがけっこう変化してきていて、振り返ってみるとかなり大きな変化になっています。
そんな変化が、どんなところから起こったのか。その変化によって何が得られたのか。そんなことを「本をテーマにして語る」ことを目指してみました。
かつてごりゅごのブログのテーマは「だいたい言いたいだけ」だったんですが、なんかそれに近い「言いたいことを言うために本を素材にする」という手法を使ってみた、という実験。
かつて自分が好きだったことを思い出し、それを少しアレンジして今の自分に当てはめてみる。今年はそんなことをする機会が多いんですが、今回のブックカタリストなんかもまさにそういう感じの内容だと言えるのかもしれません。
今回出てきた本はこちらで紹介しています。
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今回はデイモン・セントラの『CHANGE 変化を起こす7つの戦略: 新しいアイデアやイノベーションはこうして広まる』を取り上げました。
書誌情報
* 原題
* 『CHANGE:How to Make Big Things Happen』
* 出版日
* 2024/1/25 (原著:2021)
* 出版社:
* インターシフト
* 著
* デイモン・セントラ
* ペンシルヴェニア大学のコミュニケーション学、社会学、工学の教授。
* 翻訳
* 加藤万里子
* 『アナログの逆襲』など
目次や今回の内容に関係する倉下の読書メモは以下のページにまとめてあります。
◇ブックカタリストBC088用メモ - 倉下忠憲の発想工房
「弱い絆」を再考する
昨今のビジネス書などでは、「弱い絆」が重要だとよく言われます。
弱い絆とは、日常の人間関係よりも少し「薄い」関係性のことで、そうした人たちは自分の日常と異なった環境で生活しており、異なる情報を持っていることが多いので、そこにアクセスしましょう、というわけです。
また、そうした弱い絆で人々がつながるSNSは、情報の拡散に貢献することはよく知られています。プロモーションなどで「発信力」のある人に仕事が集まるのは、そうした人たちならばより効果的に情報を拡散してくれるだろうと期待してのことでしょう。
そのような情報の拡散モデルは、「情報はウイルスのように広まる」という観念が前提にあるわけですが、本書はそこに異議を唱えます。たしかにそうした伝播の仕方もあるが、そればかりではないだろう。単に情報を広めるだけでなく、行動や信念を変えるような変化が広がっていくのは、「ウイルス」のようなモデルとはまったく違っているんだ、という議論が実例を通しながら検討されていきます。
本書において学べることはたくさんあるわけですが、「弱い絆」至上主義を再検討してみることはその中でももっとも重要なことかもしれません。
たしかに強い絆しかない状態よりは、弱い絆があった方がいい。しかしそれは、弱い絆が強い絆を代替してくれることを意味しない。むしろ、土台として強い絆があるからこそ、弱い絆の力が活かせるのではないか。そんな風に考えることができるでしょう。
その他、表面的なプロモーションではなく、より深くコミットした新しい動き(運動)を起こしてみたい人には有用な知見が多く見つけられると思います。
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面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。
今回は(最初はシンセサイザーの話をしようと思ってたのにいつのまにかその導入部分が広がって)『音楽の人類史:発展と伝播の8億年の物語』のごく一部の部分だけを紹介しました。
ごりゅごの今年のブックカタリストのテーマは「つなげる」だって言っといて、今度は逆に「一回で一冊分を取り上げていない」というこの感じ。
これは、次回と「つなげる」ことを目指しているが故に起こった現象です。
こういう屁理屈が得意になったのも、ブックカタリストを長年続けてできるようになったことです。
次回の予定は(ごりゅご回は約一ヶ月後の公開ですが)「シンセサイザー」なんかの話の予定です。それはおそらく「物理と音楽」をつなげる話。今回は「歴史と音楽」をつなげる話。
今年はけっこう音楽に関連する本を読んでることが多いんですが、音楽という分野もいろんな分野と大きくつながっている。
そういうことを、こうやって色々な観点で紹介する中で「つなげて」話せたら面白いな、と思ってます。
今回出てきた本はこちらで紹介しています。
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今回は二人が読んだ『体育館の殺人』というミステリー小説から「本の読み方」について考えます。
「読者への挑戦状」への挑戦
発端は、倉下が『体育館の殺人』を読んで「読者への挑戦状」にきちんと挑戦しよう、という試みです。そこにいたる流れは二つありました。
まず一つは、アニメ『アンデッドガール・マーダーファルス』で青崎有吾さんに興味を持ち、以前から面白い作品を書く人だと聞き及んでいたので、じゃあ一作目の『体育館の殺人』を読んでみようという流れ。
もう一つは、一冊の本を一年かけて複数人で読んでいこうという環読プロジェクトや、毎日少しずつ本を読みその読書日記を書くという「ゆっくり本を読む」という自分の中でのマイテーマな流れ。
その二つが合流することで、ミステリー小説の「読者への挑戦状」にガチンコで挑戦しようと思いたちました。
ちなみに、これまでもミステリー小説は読んできましたが、本気で「推理」したのはこれがはじめてです。つまり、何回も再読し、状況をメモしていって、そこから推論を展開していくという試みは倉下読書人生史上初だったわけです。
で、やってみて思いました。「楽しい」と。
仕事で書いている原稿のためでもなく、自分の環境改善のためにプログラミングを書くのでもない。ただただ純粋に「頭を使う」という行為はすばらく楽しいものです。純粋な娯楽という感じがふつふつと湧いてきますね。
続きのページを見れば答えが書いてあるものを、それこそ10日以上もかけて考える。その間は、他の本の読書も止まってしまう。コスパはぜんぜんよくありません。しかし、コスパが悪いからこそ、そこには純粋な楽しみが立ち上がってくることも間違いありません。
つまり、コスパを気にしているのは、「コスパゲーム」をしているので、目の前のゲーム(推理やらなんやら)に十全に没頭できないのでしょう。この辺は、昨今の情報環境の大きな問題に関わっていると思います。
というわけで、一冊の本を十全に味わうためには、ゆっくりと時間をかけ、それこそ読書メモなんかを取りながら読む「スロー・リーディング」がいいよ、というのがお話の半分です。
「読書メモ」の練習になる
もう半分が、そうやってミステリーの犯人を当てるために作る「読書メモ」が、より敷延した「読書メモ・ノート」作りの練習に最適ではないのか、という話です。
本を読んでメモやらノートを書く、というのは初めてだと存外に難しいものです。特に、普段メモやノートを取らない人ならばなおさらでしょう。「どう書くのか」と「何を書くのか」の二つが課題としてのしかかってきます。
その点、「ミステリーの犯人を当てるため」という目標が固定されているならば、何が必要で何が必要でないのかの判別はしやすいでしょう。あとはそれを「どう書くのか」です。
もちろん、「どう書くのか」も簡単というわけではありません。いろいろ試行錯誤は必要でしょう。ただ、うまくかけているのかどうかという判断は簡単にくだせます。推理がうまく進んでいるなら、メモもうまく書けているといえるし、そうでないならうまく書けていないと言える。わかりやすいですね。
一般的に「賢くなるため」の読書メモやノートは、賢くなることが瞬間的・瞬発的な結果ではなく、それはつまりメモがうまくかけているかどうかのフィードバックにかなり時間がかかることを意味します。そういうものが「上達」するのって、難しいのです。
その意味で、限定された目的を持つ推理用メモは、本を読み、メモを書くということの練習としてうまく機能するのではないか、というのがごりゅごさんのアイデアで、倉下もたしかにそうかもしれないな、と感じました。
もちろん、推理用メモの書き方がすべての読書メモに通じるわけではありません。それぞれに書き方は違ってくるでしょう。それでも、そうやって手を動かすことに慣れることさえできれば、応用はもっとずっと容易いのではないかと想像します。
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今回取り上げるのは、山本貴光さんの『文学のエコロジー』です。
本書を通して、「文学を読むときに何が起きているのか?」を考えてみます。
書誌情報
* 著者:山本貴光
* 哲学の劇場でもおなじみ
* 『記憶のデザイン』『文学問題F+f』などがある
* 出版社:講談社
* 出版日:2023/11/23
* 目次:
* プロローグ
* 第I部 方法——文学をエコロジーとして読む 19
* 第1章 文芸作品をプログラマーのように読む 20
* 第II部 空間 49
* 第2章 言葉は虚実を重ね合わせる 50
* 第3章 潜在性をデザインする 74
* 第4章 社会全体に網を掛ける方法 97
* 第III部 時間 117
* 第5章 文芸と意識に流れる時間 118
* 第6章 二時間を八分で読むとき、何が起きているのか 139
* 第7章 いまが紀元八〇万二七〇一年と知る方法 161
* 第IV部 心 183
* 第8章 「心」という見えないものの描き方 184
* 第9章 心の連鎖反応 207
* 第10章 関係という捉えがたいもの 232
* 第11章 思い浮かぶこと/思い浮かべることの間で 254
* 第12章 「気」は千変万化する 276
* 第13章 「気」は万物をめぐる 300
* 第14章 文学全体を覆う「心」 321
* 第15章 小説の登場人物に聞いてみた 342
* 第V部 文学のエコロジー 367
* 第16章 文学作品はなにをしているのか 368
* エピローグ 395
* あとがき 418
本書に加えて、『ChatGPTの頭の中 (ハヤカワ新書 009)』と『心はこうして創られる 「即興する脳」の心理学 (講談社選書メチエ)』を補助線として挙げておきます。
倉下のメモは以下のページをご覧ください。
◇ブックカタリストBC084用メモ - 倉下忠憲の発想工房
以降は常体でお送りします。
エコロジーとシミュレーション
エコロジーとは「生態学」のこと。静止した対象ではなく、対象と環境の相互作用に関心を向ける態度が生態学。つまり本書は、「生態学における文学」という意味ではなく、文学を生態学的な観点から眺めてみよう、という態度で書かれている。
面白いのは、そこに「シミュレーション」の視点が加わる点。小説で描かれる世界を、もしコンピュータ・シミュレーションで立ち上げるとしたらどのようになるか。そのような対比を対比を経ることで、そもそも私たちが文学を読んでいるときに何が起きているのかが再発見されていく。
その意味で、本書は具体的なレベルでは「文学には何がどのように書かれているのか」が検討されるのだが、そうした検討の先に「文学を読むときに何が起きているのか?」という大きな問いに取り組んでいる。個々の文学作品に対する批評というよりも、「そもそも文学とは何か」(何でありうるか)を探る文学論であると本書は位置づけられるだろう。
生きることとシミュレーション
ここからは倉下の意見がかなり入ってくるが、人は「世界」をシミュレーションして生きている。世界のそのものを捉えているのではない(物自体にはアクセスできない)。私たちは世界についての「モデル」を持ち、そのモデルをベースに世界はこうであろうと演算している(ただし意識的な計算ではない)。
小説作品は「世界」を描いている。もっと言えば、提示される作品を読者が読むときに、そこに読者なりの「世界」が立ち上がっていく。「世界」がシミュレートされるというわけだ。そのシミュレートは、もしかしたら読者がもともと持っている「世界」シミュレート.appとは違う動作かもしれない。その動作が、読者のシミュレートにフィードバックし、それまでとは違った仕方でシミュレートすることを可能にするのではないか。
本があり、読者がいて、その読者が読むことを通して変容していくこと。
それこそが「文学」という営みの生態系であろう。文学を静止的・局所的に捉えるのではなく、読み手の存在と文学によって媒介される変化を合わせて捉えること。それが文学のエコロジーであるように思う。
だからこそ文学は「生き方」を変える。というよりも、「生きる」という営みの励起の仕方を変えていくのだ。「生きるとはどういうことか」ということを根本的に揺り動かせるのは、文学が私たちのシミュレートに影響を与えているからだ、というのは何の確証もないけれども、今後時間をかけて考えていきたい命題である。
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今回は、jMatsuzaki さんをゲストにお迎えして、新刊『先送り0(ゼロ)―「今日もできなかった」から抜け出す[1日3分!]最強時間術』についてお話をうかがいました。
書誌情報
* 出版社
* 技術評論社
* 出版日
* 2024/2/24
* 著者
* jMatsuzaki
* 1986年生まれ。クラウドサービス「TaskChute Cloud」開発者。jMatsuzaki株式会社 /jMatsuzaki Deutschland UG代表取締役。一般社団法人タスクシュート協会 理事。
* システム系の専門学校を卒業後、システムエンジニアとして6年半の会社員生活を経て独立。会社員時代にjMatsuzakiの名で始めたブログが「熱くて有益」と人気を博し、最高で月間80万PVに達する。現在は会社経営のかたわら、サービス開発や執筆、講演活動をしている。2018年よりドイツ在住。
* ◇TaskChute Cloud by jMatsuzaki Inc
* https://taskchute.cloud/users/top
* 佐々木正悟
* 目次
* 序章 時間に追われ、先送り癖に悩まされている人へ
* 第1章 先送りゼロを習慣化するための3つのルール
* 第2章 先送りゼロを支えるメソッド「タスクシュート」
* 第3章 先送りゼロを実現するシステムの全容
* 第4章 スモールスタートで先送りゼロの成功体験を重ねる
* 第5章 先送りゼロを実現する考え方のポイント
* 第6章 長続きする習慣を支えるログの活用法
* 第7章 複数のタスクからなるプロジェクトで先送りゼロを実現するには
* 第8章 うまくいかないときのために
「タスクシュート」というメソッドに入門するための一冊ではありますが、その道のりの先には「時間の使い方=生き方」の変化が見据えられています。
その「タスクシュート」はかなり偏った印象で捉えられることが多いメソッドなのですが、そこに含まれる有用なコンセプトを、より広く受け入れてもらえるように本書ではさまざまな工夫がほどこされています。そうした工夫は、陥りやすい挫折をケアしてくれるでしょう。
また、これはタスクシュートに限ったことではありませんが、タスク管理的な行為を行うときに、当人の「完璧主義」「理想主義」が暴走している状態では、何をどうやってもうまくいくことはありません、この場合の「うまくいく」とは、結果に納得できる、満足感や幸福感を得られるというような意味です。
たしかに作業はたくさんこなせるようになったけども、常に焦りの気持ちを覚えているというのでは、「成功」とは言えないでしょう。本書はそうした焦りに対する処方せんも与えてくれます。
その意味で、本書の「先送りゼロ」とは、物事を後回しにすることが何一つ起こらない状態というよりも、「先送りしてしまった」という感覚が生みだす罪悪感や自責の念をゼロにできる状態、という方が近しいでしょう。先送りを繰り返すことで発生する、自分の心への攻撃を止めることが大切なわけです。
もちろん、たとえ1分であっても何かしら着手することは物事を確実に前に進めるわけですから、実際的(あるいは能率的)な意味でも効果があると言えます。
ちなみに、本書で提示される三つのルールは以下。
* 1日の初めに今日やることを決める
* 1日の終わりにその中で先送りしたものの数を数える
* 1分でも手をつけたら「先送り」とはしない
ばかばかしいと思われるかもしれませんが、これはかなり有効です。『ロギング仕事術』もルール自体は違うものの、似たコンセプト(実際にやったことを重視する)を持っていると言えます。すべてはログ/ノートからはじまるのです。
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面白かった本について語るPoadcast、ブックカタリスト。今回は『ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした「成功の普遍的法則」』と『残酷すぎる人間法則』の2冊から考える人間関係をテーマに語りました。
ごりゅごの今年のブックカタリストのテーマは「つなげる」です。
ブックカタリスト本編の中で、2冊の本をつなげて語りつつ、その内容は前回ともつながることを意識しています。
3年くらいブックカタリストを続けて、ようやくこういう切り口で本を紹介できるようになったぞ、という感じがしています。
これ、3年前に同じことをやったとしても、もっと「無理やり」な感じになったような気がします。
今年公開した2回は、よい意味で「無理してつながりを見つけようとして読んでいない」本で、3年分の読書メモの蓄積があって、そこから自然に「この2冊を組み合わせたら面白いかもな」と思えたもの。
そういう意味では、2024年は「ちょっと進歩したごりゅご」をお見せするのが今年のテーマだといえるのかもしれません。
今回出てきた本はこちらで紹介しています。
📖ブックカタリストで紹介した本 - ナレッジスタック - Obsidian Publish
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今回は、2023年11月に発売となった『思考を耕すノートのつくり方』を著者自身が紹介します。
書誌情報
* 著者
* 倉下忠憲
* 出版社
* イースト・プレス
* 出版日
* 2023/11/17
* 目次
* はじめに
* Chapter 1 知的道具としてのノート
* 「頭の中だけ」は限界がある/頭の使い方のサポート/気軽に、自由に使う
* Chapter 2 使い方のスタイル
* ノートの種類/罫線の意味/サイズ/紙質と使い心地/ページ/タイムスタンプの重要性/ナンバリングの利便性/貼りつける etc.
* Chapter 3 書き方のスタイル
* 日記/作業記録/メモ(アイデアメモ)/講義ノート/タスクリスト/
* 会議・打ち合わせノート/着想ノート/思考の整理/研究ノート/読書記録/ライフログノート/振り返りノート/フリーライティング etc.
* Chapter 4 ノートQ&A
* 何からはじめるのか/いつ見返すか/記入量の増やし方/ノートの使い分け/デジタル情報とのつきあい方 etc.
* 付 録 ノートをさらに使うためのブックガイド
* おわりに ノートを自由に使う
本書は、著者独自のノート術を紹介するのではなく、「ノート術」というのがどのような部品で成り立っているのかを細かく紹介することで、読んだ人一人ひとりが自分なりのノート術をつくりあげることを手助けする本です。
ノウハウは「つくる」もの
世の中を見渡してみると、たくさんのノウハウが見つかります。「ノート術」ひとつ取ってすらそうです。Aさんは「このノート術が最高だ」といい、Bさんは「このノート術こそが真に成果をあげるための方法」だと言います。そのまま進めば"宗教戦争"になりかねない勢いです。
一方で、少し引いてみれば、Aさんは自分のやり方で成果を挙げているのだし、Bさんもまた自分のやり方で成果を挙げているのだと言えます。ある方法を使わなければ成果を挙げられない、というわけではありません。人はそれぞれに違いがあるわけで、その人に適した方法も違っているというのは考えてみれば当たり前の話でしょう。
そのように考えれば、「成果を挙げる究極の方法」を追い求めるのはやや虚しいかもしれません。いつまで経っても手に出来なさそうですし、無用な論争も起きるでしょう。そうした探究を進める代わりに、「自分がうまくやれる方法」、もっと言えば「今の自分がうまくやれる方法」を見つける方が、生産的だし健全な気がします。
そうした考え方を実用主義的ノウハウ呼び、理想主義的ノウハウと区別してみるとまったく新しい「ノウハウ観」が生まれてきます。行為の主体者は、究極的に存在するノウハウを「身につける」のではなく、そのときそのときのニーズに合わせたノウハウを「つくっていく」のだという観点です。
本書はそうしたノウハウ観をベースに書かれています。
ノウハウ書の問題点
もう一点つけ加えると、私が考えるに最近のノウハウ書はいくつかの「問題」を抱えています。
まず「理想的過ぎる」点です。あれをこうしたら、こうなりますよね。やった! という感じ。そこには現実に起こりうるさまざまな抵抗や不具合がまったく無視されています。簡単に言えば「そんなにうまくいくなら、始めから困っていないよ」というツッコミを入れたくなるのです。
で、理想的な状況だけが語られているので、不具合に遭遇したときにまったく対処ができません。それでは実行はおぼつかないでしょう。
次に、「発案者に最適化されすぎている」点です。ある人にとって、最高の効果を上げられる方法は、むしろ性質や傾向が違う人にとって効果を上げにくい方法になっている可能性があります。それ自体は別に構わないのですが、「このやり方でうまくいく。このやり方でないとうまくいかない」という形で説明されていると、効果を上げにくい部分をアレンジすることができません。そうなると、微妙にうまくいかない部分を抱え続けなければならなくなります。これはけっこうストレスで、それが挫折の原因になったりもします。
最後に「過程がなさすぎる」問題です。ノウハウは「つくっていく」ものであって、そこには経過があります。言い換えれば歴史があります。極端なことを言えば、ある人が何かしら成果を挙げられているのは、有効な方法を手にしていることだけでなく、むしろその方法を確立にするに至ったプロセスが背景にあるからです。そのプロセスの中で、何が効果があり、何が効果がないのかを体験的に理解してきたからこそ、そこにある方法を十全に使えている点があるでしょう。
また、そうした理解があるからこそ、手持ちの方法が不具合を起こしたときにでも、新しく変容させていける対応力も持ちます。
一方で、「はい、これが完成品です」と手渡されたらどうなるでしょうか。そこには経過もなく、ということはそこからの変化もありません。そこにある完成品に、自分自身を合わせるしかなくなるわけです。これはかなり窮屈なことです。
だから本書は、ノート術の本でありながら、「成功した著者のノートの使い方を真似すれば、明日からあなたも成功者になれる」的なスタンスではなく、非常に技術的な視点(エンジニアリング的な視点)においてノート術を紹介しています。
もちろん、特定の誰かのノート術をノウハウとして紹介することに意味がないと言いたいわけではありません。そうした情報から学ぶことはたくさんあります。一方で、それは「お手本」でもなければ「理想的」でもなく、ましてや「こうでなければならない」という絶対的なルールではありません。一つのヒントであり、もっと言えば行動を促す「触媒」でしかないのです。
世の中のノウハウをそのような姿勢を受け取ることができるならば、現代は「自分のノウハウ」をつくるためのヒントがいくらでも見つけられる環境だと言えるでしょう。個人的には、そうした見方が少しでも広がればいいな、と願っております。
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