Episodi
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Q:店長です。スタッフに本部主催の育成研修に行ってもらいました。店舗での勤務はしていないので給料を支払わなかったのですが、スタッフから「研修のときの給料が入っていないのでは」と言われました。給料は払わないといけないのでしょうか?
A: 仕事に関する外部研修の場合で、スタッフが自主的に受けているものでない限り、店舗内での勤務でなくても給料は発生します。
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<解説>
コンビニエンスストアで勤務する店長やスタッフが研修を受ける場合、というと、その多くは本部主催のものが中心になるでしょうか。例えば、本部がスタッフ育成の一環として店舗に提供している店内資格の取得を目的とした研修(店長研修やスタッフの資格など)を用意しているチェーンもありますし、最近では、接客力向上研修や管理者を対象とした労務管理のセミナーも増えてきています。その他、国家資格や民間資格取得のための講座、スキルアップのために外部機関の行う研修やセミナーの受講を推奨しているところもあるでしょう。さらには社内研修も行っている店舗(会社)もあるかと思いますが、こうした研修受講が給料支給の対象になるのかどうか、というのが今回のテーマです。
そもそも、給料が発生する条件は、使用者(店舗の責任者)の指揮命令下を受けて、労働者(スタッフ)が労働を提供すること。これは、店舗での勤務はもちろん、店舗外においても同じです。店舗の外で受ける研修が「労働」にあたるかどうかが、判断材料となります。いくつかの事例をもとに確認してみましょう。
【研修の事例と労働時間の関係】
①参加の義務が特にない、店舗側でも強制ではない本部研修
スタッフ側から「自分の勉強のために行きたい」と自主的に申告があり参加する場合は、すぐに労働時間(給与の支給対象)とはならず、各店舗の判断に委ねられます。もちろん、労働時間として給与を出しても構いません。
本部研修に限らず、その他の外部機関での研修、セミナーなども同様です。
②店内資格を取得するために受けに行く本部主催の研修
これは、「店内資格取得」そのものが仕事(役割や業務内容、あるいは給与)に直結する研修であり、店長やオーナーから「受けてきてね」などの明確な指示で受ける場合は、確実に労働時間となります。ただ、強制力は一見なくても、その資格を取らないとスタッフが店舗で不利益を被る(減給の対象となる、昇給しない、受けないことを理由に極度に業務内容を制限される、など)ような場合は、強制力が働いているのと同じです。この場合は、同じように労働時間となり、給与支払いの対象となります。(場合によっては、こうした「見えない強制」がトラブルのもとになりますので、対応も注意が必要です。)
逆に、その店内資格の取得がスタッフや店舗にとってある程度自由度の高いものであり、「この資格を取っておくと有利に働くな」という理由で受講をする場合は、すぐに労働時間とはなりません。
③所属企業内で行われる研修
店舗外で行われる自社主催のイベントや研修などがこのケースにあたります。複数店舗経営の企業では「店長会議」などの名称で、取り組み報告と勉強会を兼ねることもあるようです。この場合も、強制的に参加となる場合は、給与が発生します。例えば「店長は強制参加、その他スタッフも自由に参加OK」となっていて、スタッフが自分の意思で参加をする場合は、その部分に限りただちに労働時間とは判断されません。
まとめますと、その研修が「自由参加になっている」ということ、また、「受けないことによって対象者が不利にならない」の二つの要件を満たしている場合には、給与支給の対象とはなりませんが、それ以外の場合は労働時間となり、給与支給の対象となります。
【給与支給のポイント】
もし、その研修が労働時間となり給与の支払いをする対象となる場合、どのように計算すればいいのでしょうか。時給者の場合は、その日に受けた研修時間を申告してもらい、時給×研修時間(休憩時間は除く)として計算するのが自然でしょう。また、この場合は忘れずに勤怠登録もしておきましょう。月給者の場合は、基本的に固定給であるため、研修時間が通常の勤務時間を超えない限りは変動がありませんが、例えばその研修が休日に行われる場合は、割増賃金が発生しますので、忘れないように計算しましょう。
また、移動時間については、通常の店舗への出勤と同様、労働時間とは判断されません。理由は、その移動時間に仕事をしているわけではない(原則何をしていてもいい自由時間である)ことによります。
【研修受講もモチベーションアップに】
例えば、月に一つだけ仕事に関連する研修や講座を受講すると、その受講費用の一部を店舗側が負担するような制度を導入することで、スタッフが自ら成長する機会の提供にもつながるかもしれません。研修はうまく活用すると、スタッフのスキルアップはもちろん、やる気の維持・向上にもつながります。 -
Q:オーナーです。最近、本部からの話もあり、1分単位の労働時間計算に切り替えました。ですが、出退勤時のスタッフの一挙手一投足が気になります…。実際には、どのように運用すれば良いのでしょうか…。
A:できる限り誤差を縮めるために、店舗内で勤怠登録(出勤・退勤などのスキャン)や残業のルールを作りましょう。 ただし、作るだけでなく、運用ができるように、開始当初はスタッフをフォローすることも重要です。
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<解説>
15分。30分。まず、よく聞くのはこの2つでしょうか…。これらはすべて労働時間管理の単位です。例えば、9時から17時のシフトで、17時14分まで働いた場合、15分単位の労働時間管理だと、17時に修正をする方もいるのではないでしょうか。かくいう私も店舗勤務時代は疑問視することもなく、14分を帳消しにしていました。ですが、これは正確にはダメな労務管理です。なぜかというと、このやり方は14分の勤務時間分の給与が未払いとなってしまうからです。いわゆる、労働基準法という法律の違反行為となってしまうのです。
こうしたことから、現在は店舗での独自判断、あるいは本部からのアドバイスをきっかけに、労働時間管理の設定を1分単位に切り替えた店舗が増えていると聞きます。ですが、この1分単位の労働時間管理、「運用はすごく難しい」と感じているオーナー・店長も多いのではないでしょうか…。
【なぜ難しいと感じるのか】
オーナー・店長からよく聞く声としては、「実際の運用方法がわからない」「仕事を終えて、勤務終了の勤怠登録前に、10分以上スタッフ同士で話をしている光景を見かける。おしゃべりに給料を払うのだと思うと気が気じゃない」などというものがあります。確かに、早く出勤して忘れないよう先に勤怠登録し、そのあとスマホを触っているとか、勤務が終わったあともダラダラ話し込んでいる行為に対して、給与を支払うのは釈然としませんよね…。1分単位の労働時間管理だと、登録された時間そのままに給与確定の処理をすることで、すべて給与に反映されてしまうのですから、これはなんとか対策を立てたいところ。では、実際にどのように対応すれば良いのでしょうか。
【店舗内で勤怠登録に関するルールを作ろう!】
①全体的な運用方法
大きくは2つに分けられます。一つは「スタッフによって登録された勤怠をすべてそのまま給与に反映させる」、もう一つは「一定のルールを設けて、そのルールから外れるものについては本人に確認のうえ勤怠修正を行う」です。ただ、一つ目の方法はやはり先述の通り、仕事しなくても給与を得られる手段とスタッフに捉えられてしまう可能性があるため、二つ目が一般的ではないかと思います。具体的にどこでルールを設ければいいのかを次に見ていきます。
②勤怠登録のタイミング
ある店舗では登録時間の誤差をできる限り解消するために、出勤した場合は勤務開始の2分前、勤務終了後も2分以内にそれぞれ勤怠登録する、とルール化、明文化しているところがあります。この「2分」部分は、もちろん店舗により幅がありますが、勤務開始/終了時刻からは大きく外れないように、最大でも5分前、5分以内にとどめておいたほうが良いでしょう。
③早出、残業、小休憩の判断方法
コンビニエンスストア店舗では難しい部分もありますが、早出や残業、小休憩(取る場合)をなんらかの方法でスタッフに申告させることを常態化することをお勧めします。具体的には、早出・残業・小休憩の申請書フォーマットを作り、必ずその日帰るまでに書く、ということをルール化します。特に意味のある早出・残業をし、成果につなげてもらうことを前提に考えるのであれば、ノー申告制はアウトです。申告のタイミングも、理想は事前ですが、責任者が24時間365日いるとは限らないため、給与締め日までであれば、事後でもOKとしても良いでしょう。この方法によらない早出や残業、小休憩は、「店舗が早出・残業ではないと確定した」場合に限り、給与へ反映させない(勤怠の修正を行う)ことも検討可能です。
④周知と徹底を忘れずに!
これまでの内容は、一度決めたらしっかりとスタッフ全員で実行できるようにするために、周知をはかりましょう。目的と具体的な方法を記載した案内文書を作成し、必ず開始までに目を通してもらうこと、また、できる限りオーナーや店長から一人一人に直接口頭でも方法を説明するようにします。内容を見るだけでは理解しきれない人も多いためです。また、運用をスタートしたあとも、しばらくはフォローが必要です。早出・残業申請については特に、申請書への書き漏れがないかどうかを呼びかけましょう。
以上、1分単位の労働時間管理の運用方法を見てきましたが、実際は、完璧に厳密に運用することはなかなか難しいのもまた現実です。そのため、今回のことを参考に一定のルールを設け、店舗とスタッフ両方に納得のいく方法で運用をするようにしましょう。 -
Episodi mancanti?
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Q:店長です。最近、遅刻や欠勤、中には退職の連絡をLINEで送ってくるスタッフが多く、最初は注意していたのですが、あまりにも件数が多いので店舗スタッフ連絡用のLINEを作って運用しています。しかし、LINEでの退職連絡は有効なのでしょうか…。
A:LINE連絡はルールを作って運用しないと店長が大変になります。また、LINEでの退職連絡も、店長に意思が伝わった時点で有効となります。しかし、必ず一度店舗に来てもらって退職の手続きをとるなど、その後の流れが非常に重要となります。
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<解説>
LINEやTwitter、FacebookでのSNSコミュニケーション(以下、「LINE」にまとめる)経験者が多い現代、プライベートはもちろん、仕事の場にも及んでいるのは周知の事実です。一定のルール下で運用するのであれば有効なツールとなりえますが、一方的であるうえ、顔を突き合わせない分、放った言葉の真意が伝わりにくい点が課題です。
なかには過激な発言、誤解を招く発言によるスタッフ間トラブルが発生したり、遅刻や欠勤、退職の連絡をLINEで送ってくるスタッフがいたり…と、近年は店舗責任者の多くが「LINEの運用に悩んでいる」と嘆いています。今回はその中でも、遅刻や欠勤の連絡をLINEですることの問題点と対策、退職連絡の有効性について見ていきます。
【LINE連絡の問題点と対策とは?】
「すいません、遅刻します」「休みます」。
そのスタッフが出勤する直前に、突然LINEでこのような言葉を受け取った経験がある方もいらっしゃると思います。このLINE連絡の問題点はどこにあるのでしょうか。問題だな、と感じる部分は人によってそれぞれかもしれませんが、私が認識するLINE連絡の問題点を3つ挙げます。
①遅刻、欠勤理由が書かれていない
どのような理由で遅刻するのか、休むのかが、これではまったく伝わってきません。「理由は何?」とLINEで毎回聞くのも店長としては辛いところですね。
②感情が伝わってこない
文字だけがポン!と届くため、そのスタッフの感情や状況が瞬時に理解できません。責任者としては、寝坊なのかすぐに解決し得ない重大な理由によるものなのかで、今後取るべき対策が変わってきますが、もう少し状況を聞き出さないと対策の取りようがありません。それ以上に、簡単に送ってこられているように見えるLINEでのメッセージに、店長は「遅刻や欠勤を軽く考えているのでは」と解釈しがちです。
③見ていない可能性がある
店長やスタッフがリアルタイムでキャッチできればまだしも、LINEは一方的な連絡ツールなので、勤務開始時刻を過ぎて確認することになる場合も考えられます。
まとめると、LINEは文字こそ届きますが、それだけではスタッフの本当の状況がわからないため、店長は電話や対面など、直接会話する以上にこまめなコミュニケーションを要求されることになります。
【うまく運用するにはルールを設けよう!】
LINEでの連絡はダメ!ということであれば、LINEでの連絡を禁止、徹底することが必要ですが、これだけSNSコミュニケーションが当たり前の時代となると、ある程度は容認の姿勢をとって行くことで人間関係の構築・維持がはかりやすくなるようにも思われます。もし、LINE連絡を有効とする場合には、一定のルールを設けて運用したほうが良いでしょう。
①遅刻・欠勤の連絡は理由をつけて、緊急時は電話で
理由があるからこそ、店長も納得して理解を示せるもの。また、就業規則や就業ルールなどでも見られる「理由なき遅刻・欠勤は無断遅刻・無断欠勤とし、処罰の対象となる」を、ここでも有効に活用しましょう。それに加えて、数分で「既読」にならない場合や緊急時には電話で連絡をしてもらうよう取り決めます。
②気持ちを込めてもらう
?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、文字だけのやりとりでも、気持ちを込めることはある程度可能です。顔文字や絵文字を使ってください、という意図ではありません。遅刻することや休むことは、どのような理由があったとしても、店舗に影響を与えることになるもの。それについての気持ちや反省、対策を自分なりに書いてもらうようにするルールを設けてみましょう。
③もちろん、出勤時には直接対話をする
スタッフが出勤してきたときには、改めて今回遅刻、あるいは欠勤した理由や対策などについて報告をさせるようにしましょう。
【LINEでの退職連絡は労務管理上有効か?】
最後に、LINEでの退職連絡が有効かどうか、ということについてですが、これは店長に退職の意思が伝わった時点で「有効」です。退職の意思表示は口頭でも成立するからです。ただ、労務管理の観点からは、LINEで終わらせることなく、退職届を持って必ず一度は店舗に来てもらって、退職の手続きを完結させるようにしましょう。なぜ退職をするのかの理由確認はもちろんですが、貸与していた制服や備品を返却してもらったり、退職日の確認、最終給与の額や渡し方の案内などをしたりする必要があるからです。その観点では、退職連絡にLINEは適さないでしょう。 -
Q:オーナーです。店長には店舗運営を任せているということで「店長手当」を基本給とは別に毎月つけています。モチベーションを上げて頑張ってもらいたいのと、残業代をあまり多くは払えないので、手当で調整をしているのですが、店長から「残業代をちゃんと払ってください!」と言われました。どこがダメなのでしょうか?
A:業務遂行の対価として払う手当の額は、基本給とあわせて残業代を計算するときの基礎となります。基本給とわけて「◯◯手当」を作っても、残業計算時に除くことはできないため、注意しましょう。
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<解説>
「◯◯手当」は、基本的に一定の条件を満たしたスタッフに支給するものです。例えば、Qのような「店長手当」。マネージャーや責任ある立場に就くと「マネージャー手当」「役職手当」など、名称はさまざまですが、一定の手当をつけるところが多いようです。また、アルバイトスタッフに対して、たとえば発注担当者には「発注手当」をつけるところもあります。
あとは、年末年始に勤務したスタッフに対する「年末年始手当」など。中には、一定の条件において借家で生活するスタッフへ支給する「住宅手当」や扶養する家族がいるスタッフに対する「家族手当」など、業務には直接関係はないものの、手当の支給対象にしているところもあるようです。
これらの支払い方法は、月給の人であれば、まとまった数千円〜数万円単位の手当になりますし、時給であれば、基本時給に上乗せをする形で計算をすることが多いです。こうした手当をつけることによって、スタッフが「責任ある仕事を任せてもらえて、かつ給料も上乗せでもらえる」と、仕事や家庭でのモチベーションアップにつながり、さらに成長していくきっかけとなるため、手当は有効に使うと良い影響があります。しかしその反面、多用すると管理する側が大変になってきます。その最たるものが、「残業代の計算」です。
【業務関連の手当は基本給と同じ?!】
それでは、手当を設定する際の注意点を見ていきましょう。
①手当を増やしすぎないよう注意
どういう条件のもとにつける手当なのか、を整理して有効に活用できる程度の種類にとどめましょう。「発注手当」(発注担当者に対して)、「育成手当」(スタッフ育成担当者に対して)など、特定の業務に対して設定する場合は、本当に別途手当をつけるべき業務なのか、をしっかり考えて実行に移すようにします。たとえば、「レジ手当」「納品手当」「トイレ清掃手当」「油交換手当」など、各業務で手当があったらどうでしょうか…。それ自体が悪いことではもちろんないですが、煩雑になりますよね。
また、社員に多い「店長手当」「役職手当」は、役割でまるっと設定できるので便利だ!と考えるオーナーも多いですが、これもなんとなく設定してしまうのは禁物。例えば店長手当の場合、何が店長業務なのかを明確にしないまま手当をつけると、スタッフと同じ仕事しかできない(店舗の数値管理、人員管理ができない)店長がいても同じ手当を支払うことになり、支給する本来の意味が薄れてしまうでしょう。
②残業代の計算に入れるものと入れないものがある
残業代。オーナーや経営層の方からすると、できれば最小限にとどめたいものですよね。今回のQの回答部分ですが、基本給(基本時給)に乗せる「◯◯手当」が“業務に対する対価”である場合、基本給と合計して、残業代の計算の基礎としなければなりません。
時給の例でいくと、時給1,000円のスタッフに、発注手当が100円ついたとします。この場合は、1,100円が残業代の計算の基礎となる、ということです。残業代は法律上1.25倍で計算することになりますので、1,100円×1.25=1,375円が、残業時の時給となります。残業代計算においては、俗っぽい言い方をすると「◯◯手当は基本給と同じ扱い」なのです。
また、たまに見かけるのですが、「インセンティブ」制度を導入している店舗があります。たとえば店長であれば、月の売上目標や利益目標を達成した、とか、予約商材で店舗の目標数をクリアした、などの頑張りをプチ賞与のような形で支給するところがあります。実はこれも、毎月支払われる要素が少しでもあれば、残業代の計算の基礎となります。この場合は先述の残業代計算とは違い、少し特殊で、「(インセンティブ÷月の総労働時間)×0.25×残業時間」で、残業代が計算されます。
反対に、残業代の計算の基礎とならない手当もあります。図表にもまとめていますが、「家族手当」「通勤手当」「別居手当」「子女教育手当」「住宅手当」「臨時に支払われた賃金」「1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」のみとなります。ここにあたるもの以外の手当は、どのような名称であっても残業代の計算を行う際に基本給と合算したり、インセンティブのように計算をしたりする必要がありますので、注意しましょう。 -
Q: 店長です。最近、労働基準監督署の調査があり、36協定が出ていないので出してください、と言われました。36協定とは何か、出さないと何がダメなのか、教えてください。
A: 36協定とは、残業や休日出勤を行うために必要な届け出の通称です。これを出さないで残業などをスタッフにさせていると違法となり、罰則が科せられることがあります。
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<解説>
ニュースでも大きく取り上げられるようになってきた、「違法残業」の問題。「うちは小さいし大丈夫だろう」「自分は関係ない…」なんて思っていませんか?もしかしたら、知らないうちに違法残業を行っているかもしれませんよ?…と最初から脅すような言葉を言ってしまいましたが、これは脅しでもなんでもなく、本当のことなのです。
冒頭のQで出てきた「36協定」。読みは「サブロク協定」と言います。これは労働基準法第36条の内容から来ている通称で、本当の名称は、「時間外・休日労働に関する協定届」です。その名の通り、時間外(早出や残業:以下「残業」)と休日出勤を行う場合には作成し、店舗のある地域の労働基準監督署に出す書類です。協定とあるのは、店舗側(使用者)と働くスタッフ(労働者)の間で協議して決める、という意味合いです。
まったく残業も休日出勤もないよ!という場合は出さなくても良いのですが、24時間営業、しかも何が起こるかわからない店舗での業務において、残業や休日出勤は一般的に避けて通れないもの。最近では1分単位での勤務時間計算も強く言われていることもあって、出しておくに越したことはありません。
法律で決まった労働時間は、1日8時間、1週40時間。および週1回の休日の原則を設けることが義務付けられています。それを超えて働くためにはこの36協定の作成と届出が必須です。たった1枚の紙ですが、その意味合いはとても重要なものとなっています。そのポイントは4つです。
① 店舗ごとに出す必要がある
この協定の効果が及ぶ範囲は一つの店舗のみです。そのため、複数店経営をされているところは、各店舗で出しているかの確認も必要です。本社機能が店舗と別にある場合は、本社分も届け出ることになります。
② 残業時間の限度時間に注意
では、この協定届を労働基準監督署に出せば、際限なく残業などが出来るのか?その答えは「NO」です。協定に書かれた1日、1か月、1年間の残業時間、および休日労働の日数を超えて残業したり休日出勤をしたりした場合は、違法とみなされます。
ちなみに、1か月、1年間など、一定期間内で設定可能な残業時間には上限があります。例えば、「1ヶ月であれば45時間まで、1年間であれば360時間」と決められているのです。そのため、それらを超えた設定は原則できません。休日出勤についてもスタッフがしっかりと休める範囲内で、具体的に決めておく必要があります。
③ どうしてもその上限を超えてしまう場合は…
とはいえ、人の採用、定着化が難しい現在、1人のスタッフにかかる負荷が大きくなりがちです。そうなると、先に決めた時間以上の残業が発生してしまうこともあるでしょう。私の関与している店舗でも、月に60時間に達してしまう方がいらっしゃいます。こんなときの例外があります。それは、「特別条項」です。
特別条項とは、「臨時的に、限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合には、従来の限度時間を超える一定の時間を延長時間とすることができる」ものです。つまり、月45時間が通常の設定だとして、どうしても超えてしまう事情がある場合は月60時間まで残業ができる、などの取り決めを行うことができるのです。しかし、あくまで「特別の事情」であるため、その事情が発生するのは1年の半分を超えないこととされており、恒常的に月45時間や年360時間を超える状態が続く場合は特別な事情としてみなされません。なかなか人が集まらない!という店舗にとっては、苦しい部分ですが…。
④ 一度届け出たら“永遠に有効”ではない
「わかった、では36協定を出そう!」となり、作成をして労働基準監督署に出したからといって、安心は禁物。36協定は一般的に1年に1回、更新をする必要があります。36協定の「期間」の欄で決めた有効期間が切れそうになったら、新しい協定届を作成し、スタッフの代表者と確認、署名をもらって、再度労働基準監督署に届け出なければなりません。もちろん、労働基準監督署からは「そろそろ期間が切れますよ〜」なんて連絡はないので、自分たちで管理します。
以上、36協定について見てきました。作成と届出を怠ると、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科せられてしまうこともあります。 -
Q: 店長です。インターネットを見ていたときに「無期転換」というキーワードが気になったので調べてみたら、アルバイトの契約がちょっと変わるかもしれない、ということですよね…これについて聞かれたら、どう答えればいいでしょうか?
A: 皆さんの店舗で最も長く働いているスタッフは何年でしょうか。そして、その方の雇用契約は、正社員でしょうか?アルバイトでしょうか?
「有期契約労働者」、つまりアルバイトやパート、契約社員など、呼び方はさまざまですが、1年や半年など、期間の定めがある雇用契約に基づいて働く人を総称してこう呼びます。コンビニエンスストアではたくさんのスタッフが働いていますが、そのほとんどが有期契約労働者となります。
これらの方の「無期雇用転換ルール」という制度が少しずつ、本格的に始まっているのです…。
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少しだけ、法律の話をします。平成25年4月1日に、労働契約法という法律が改正され、今回の無期転換ルールができました。この日以降に一定の条件を満たしたスタッフには「無期転換申込」の権利が得られ、その後「無期転換したい」と言って来た場合には、期間の定めのない雇用契約を結び直さなければなりません。
この狙いは、「長く働いてくれているスタッフの安定した雇用/勤務の実現」。スタッフ側からすると、1年間や半年で契約が終わってしまうかもしれない…という不安から解消され、店舗にとっては、安定的に戦力として活躍してくれるスタッフがいる安心感も得られますよ、というものです。
皆さんの店舗では、もしかしたらすでに無期転換と同じような状況にあるスタッフもいるかもしれません。それはもちろんいいことでもありますが、逆に、雇用契約がなあなあになってしまっているところは要注意です。中には、最初だけ1年とか半年の契約を結んで、その後契約更新をすべきところまったくなされていない店舗も見かけますが、これは、実質無期雇用契約と同じ状態とみなされることもあります。その状態で何かスタッフとトラブルになって「うちは1年契約だから、もう今回で更新はしない!」と言っても、その契約は何の効力も持たなくなってしまうでしょう。
【無期雇用転換ルールの3要件】
では、この無期雇用転換ルールの条件を見ていきます。次の要件をすべて満たしたスタッフは「無期転換申込」の権利が得られることになります。
① 有期雇用契約の通算期間が5年を超えている
まず定義をお話しすると、「同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超えていること」が要件となります。例えば、多くの店舗では雇用契約を1年間で結んでいるかと思いますが、その場合は、5回の契約更新が終わったタイミングと同時に、「無期転換申込権」が発生することになります。
もし、1年を超える場合、例えば3年間の雇用契約を結んだ場合には、次も3年で更新をした際通算6年となるので、4年目で「無期転換申込権」が発生することになります。
② 契約の更新回数が1回以上
平成25年以降で雇用の更新が1回以上行われているかどうか、ということです。これは、比較的わかりやすいかと思います。コンビニエンスストアスタッフの契約については、最高でも3年と法律で決められています。契約の通算期間が5年を超えるという①の条件を踏まえたときに、3年ごとの契約であれば、更新回数は一番少なくて1回になる、というのがその理由です。契約が1年の場合は、5回契約を更新していることになります。
③ 現時点で同一の雇用主との間で契約している
これが最後の条件ですが、通算5年を超えて契約をしてきた使用者(店舗)との間で、現在も雇用契約を結んでおり、かつそれが当然ながら有期雇用契約である、というものです。
以上、この3つが揃っているスタッフから「無期雇用契約に転換したい」と言われたら、5年を超えた次の契約更新の段階で無期雇用契約へ転換をしなければなりません。
【無期雇用契約に転換すると何が変わってくるのか?】
では、「無期雇用への転換をするということは、つまり正社員になるということですか?」という質問がよく出てくるのですが、決してそうではありません。結論からいうと、雇用契約が有期から無期になるだけであり、例えばフルタイムの正社員になる、とか正社員が担うような業務をさせなければならない、時給を月給にしなければならない、ということではありません。9:00〜13:00のシフトで勤務しているスタッフが要件を満たして無期雇用転換された場合でも、このシフトが変わるわけではないため(もちろん変わっても良いのですが)、まずはこれまで通りの業務を担ってもらうと良いでしょう。もちろん、スタッフのキャリアアップを図るという観点で、より責任ある仕事を担当してもらえるようになったら、店舗にとってプラスになるのは間違いありません。
【参考サイト:厚生労働省 有期契約労働者の無期転換ポータルサイト】
http://muki.mhlw.go.jp -
Q:店長です。現在勤務している社員スタッフの残業管理の一環として、一定時間の残業代を加味した固定給を払いたいと思っています。この場合の注意点について教えてください。
A:いわゆる「固定残業代」制度は、何時間分でいくらの残業代を加味するのかをスタッフに明示すること、適切に勤務時間を管理し、設定した時間を超えた残業については残業代を別途支払う必要があります。
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<解説>
政府が推し進める「働き方改革」の一環として、適法でない残業に対する見方が厳しくなっています。それと並行して、「残業代未払い」の問題が後を絶ちません。意図の有無にかかわらず、残業代が適切に支払われていないことによるトラブルです。
コンビニエンスストアの場合、ストコンの給与システムを使用していて時間給で勤務をしているスタッフについては、1日8時間、週40時間を超えた場合に残業代が自動計算される仕組みです。しかし、社員など固定給設定のスタッフについてはその仕組みがカバーしきれていない現状があります。そのため、予備知識がないと、本当は残業しているのに計算がされず、結果、残業代が支払われなかった…ということが起こってしまうのです。
そうした中で、一定時間までの残業を「固定残業代」という形でカバーし、その残業が発生する・しないにかかわらず一定額を支払う、という手法が増えてきています。私も社会保険労務士としてアドバイスをすることがありますが、これを正しく行うこと自体は違法ではないとされています。ただし、やり方を間違えると、違法になるだけでなくトラブルに発展する可能性もあります。今回は残業の概念と固定残業代の設定、運用方法のポイントを見ていきます。
【残業とは】
まず、残業という言葉がよく使われますが、正式には「時間外労働」と言われます。決められた勤務時間よりも早く働き始める、あるいは就業時刻を超えて働くこと、どちらも時間外労働です。コンビニエンスストアは24時間営業の店舗も多いので、どちらも発生する可能性があります。
では、時間外労働はすべて1.25倍以上の給料になるのか、というと、必ずしもそうとは言えません。通常であれば1日8時間、1週40時間を超えた場合に1.25倍で計算します。また、変形労働時間制という特殊な労働時間管理を行う場合はあらかじめ決められたシフトの勤務時間で働いて週で40時間を超えた場合に1.25倍となります。この時に固定給対象者の場合は時給単価に直して、その1.25倍を計算することになります。
【固定残業代の設定】
ただ、コンビニエンスストアは本部より1分単位の勤務時間計算を推奨されていることもあって、1分超えた場合の計算は非常に大変です。こと、固定給を支払う場合には、1時間の時給単価に換算し、かつ1分単位で計算を行うので、専門家を頼らないと対応できないケースもあります。そうしたときに固定残業代制度を導入することで、残業が一定の時間に達するまで細かい計算をする必要がなくなります。この手法は、一定時間の残業がほぼ毎月の単位で発生しているような働き方をしているスタッフがいるところではとても有効です。
ただ、気をつけたいことがあります。それは、一定の時間が何時間で、それに価する残業代がいくらなのかを事前に決めて、スタッフへ周知をはかり、かつ雇用契約書(労働条件通知書)などにも明記しておかなければ、それ自体が無効になってしまうことです。仮に、月の所定労働時間が174時間の場合、「基本給 190,000円 固定残業代(30時間)41,000円」というように、時間数と残業代を明記し、スタッフ本人に知らせる必要があります。当然ながら一定時間を超えて残業した場合には、通常の残業代計算が必要になりますので、毎回決めた時間を超えて働くスタッフが多い場合は、あまり意味を持ちません。
【固定で払えば何時間に設定してもいいの?】
これは、月であれば通常「45時間」が上限です。もちろん、36協定(時間外、休日出勤を行えるようにする協定)を出しておくことが大前提です。特別条項付きの36協定というものにすると、本当に残業せざるを得ない状況の場合は年6回まで45時間を超えて残業することができる、という協定を結ぶことも可能ですが、80時間や100時間に設定した場合、スタッフの健康面への影響はもちろん、労働基準監督署にも注目されやすくなります。社員の場合どうしても残業が長くなりがちですが、60時間を超えて設定をせざるを得ない場合は、まず社会保険労務士など専門家に相談した方がいいでしょう。
【安易に採用せず、専門家に相談を】
固定残業代は、一見簡単に導入できそうに見えるかもしれません。しかし、私がコンビニ社労士としてさまざまな店舗の給与実態を見て、正しく導入ができているところはわずかです。たまたまある月で一定時間を超えて残業した場合でも、残業代が別途払われていない、という状況もよく見かけます。導入前には一度専門家に相談して、適法に実施しましょう。 -
Q:店長です。タバコや体臭が強いスタッフがいます。このまま暑くなってしまうと、他のスタッフだけでなくお客様からもクレームになるのでは…と心配です。どうしたらいいでしょうか。
A: 店舗全体で指摘できる環境づくりをした上で、個別にアナウンスしましょう。
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<解説>
接客業に携わるとき、必ず守るように言われるのが身だしなみ。そのうちの一つに「ニオイ」に関するものがあります。例えば香水、口臭や体臭、タバコのニオイなど、食品を扱う者として相応しくないニオイに注意しましょう、という話は、一度は聞かれていることと思います。
最近ではセクハラやパワハラに続いて「スメルハラスメント」という言葉が聞かれるようになってきました。柔軟剤の過度なニオイが気になる、という人も出てきているようです。寒い時期にはそれほど気にならなかったニオイも、夏に突入するにつれて目立ってきてしまうため、早めに対策を取っていかなければなりません。店舗のスタッフ管理の一環として取り組む場合、どのような対応をしていくとよいかを見ていきます。
【放置するとどういう影響があるか】
まず、こうしたニオイの問題を、店舗側が放置するとどのような影響があるでしょうか。まず職場環境の面では、スタッフ間の人間関係に少なからず影響が出るでしょう。「言いたいけど言えない」状態、つまりコミュニケーションをうまく取れないことから、チームとしての統制がはかれなくなっていきます。こうした状態が続くと、最終的には店舗環境の維持、売上や利益にも影響が及ぶ可能性があります。
また、労働契約上、こうした職場環境調整義務やスタッフの安全配慮義務などが店舗側には課せられることから、仮にニオイの問題を放置し、雇用しているスタッフに何らかの健康被害など損害が発生したとき、店舗側が責任をとらなければならないことも想定されます。ここまで大きな影響はなかなかないかもしれませんが、常にリスクと対策は考えて対処したほうが良いでしょう。
それでは、具体的にどうすればいいのでしょうか。
【共通ルールにあっても改めてアナウンスを】
身だしなみのルールが各チェーンであるかと思いますが、仕事に慣れてくると意識が薄れがちです。中でも、ニオイについては自分では気付かないことも多く、気がつけば周りが迷惑していた…ということもあります。店長は梅雨の時期に入るタイミングで、スタッフ全員に店舗独自の注意喚起を行っていきましょう。
事務所に張り紙を行う、連絡ノートに記載する、朝礼で伝えるといった方法を活用するのはもちろん、具体的なアクションに起こしていきます。例えば、梅雨入り前から夏場にかけてはセルフチェックだけでなく、クロスチェック(2人以上での確認)で身だしなみを強化する。休憩を取った場合は歯磨きを可能な限り推奨する(洗面台が店内トイレ以外にないケースも多いため、難しいこともありますが…)。あるいは就業規則の「服務規程」部分や店内ルールに明記して「気づいた点があれば店長に言ってね」とアナウンスを行うことも必要でしょう。香水をつけることについての影響、汗のケアやタバコを吸ったあとのケアなど、具体的に書いておくことが第一歩になります。
【体臭の強い人にどう説明するのか】
それでは、もしタバコのニオイや体臭が強く感じられるスタッフがいた場合はどうすればいいでしょうか。まず、タバコの場合は喫煙後のケアを促すことが重要です。私の知っている店舗では、店長であってもタバコのニオイが残っているときに「店長、タバコ臭いよ」とスタッフから指摘をする文化があります。店長も指摘を受けてムッとするのではなく、「あ、残ってた?ごめんごめん!」と素直に受け入れ、対応しています。あまりシリアスに伝えるよりは、比較的ストレートかつ軽快な伝え方が効果を発しやすいようです。
次に体臭ですが、タバコのニオイに比べて伝えづらいでしょう。しかし、冒頭にも述べた通り自分では気付いていないこともあるため、周囲が勇気をもつことも必要です。「言いづらいのだけど…」と前置きして、全体にアナウンスしている就業ルールの説明をします。ただ、指摘をするよりは「自身ではどのような対策を取っていますか?」と、警察の取り調べ状態にならないように注意しながら、気づきを促すことが大切です。
【その他店舗で行うべきこと】
ユニフォームは定期的に洗濯していますか?バックルームに置いてそのままの場合、ニオイも含め衛生面での不安が残ります。各自に貸与しそれぞれスタッフが洗濯をする場合と、店舗で一括して管理している場合などがあるかと思いますが、いずれにせよ、清潔感を保つことはとても重要です。
「ニオイ」の感覚や文化は人それぞれ。場合によっては地域や国の特徴が表れやすいところもあり、非常にナイーブな部分ですが、話がしやすい環境を作っていけると良いですね。 -
Q:店長です。面接を経て採用したアルバイトスタッフとの雇用契約で気をつけるべきポイントはどういったものがあるでしょうか。
A: 契約期間や労働条件の書面での明示、契約更新の基準を明確にすること、契約を更新する場合は再び書面を作り直すことを確実に実行しましょう。
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<解説>
面接を経て、待望のスタッフが入社!これからコンビニエンスストアの業務を覚えて活躍してほしい…という段階で忘れてはならないのが「雇用契約」です。オーナー、店長の皆さんは、スタッフ採用の都度、雇用契約を結んでいるでしょうか。
先にお伝えすると、この雇用契約は口頭でも成立します。なので、「では◯◯さん、明日の9時から17時まで、週3回の勤務、よろしくね!時給は1,000円です」と勤務条件を口頭で具体的に伝え、そのスタッフから「わかりました」と反応があった場合にも、雇用契約が結ばれたことになるのです。しかし、人の記憶は時間とともに薄れていきます。伝えるべき内容は書面で交わしておかないと、あとで言った言わない、あるいはそんなの聞いていないといったトラブルになることがあります。では、どのように契約を交わしていくことがトラブル防止につながるのかを次に見ていきます。
【労働条件通知書と雇用契約書】
まず、国がモデルで提示しているフォーマットは「労働条件通知書」という名前です。それに、店舗側とスタッフの署名・捺印欄がある場合、「雇用契約書」という名前になっていることが多いです。労働条件の明示はどちらも有効ですが、可能な限り署名・捺印を行う雇用契約書を作り交わすほうが労使双方にとって良いでしょう。
【雇用契約書は「ここ」を定める!】
各チェーン本部が用意している雇用契約書やそれに該当する書類があるかと思います。それらを有効に活用していますか?名札作成やスタッフ登録を行うための便宜上の書類になっていないでしょうか。この書類には、原則雇用契約を交わすのに必要な事項が含まれていますので、漏らさないように記載をしましょう。ただし、この場合は最新版を使用することが大事です。
また、本部の書式を使わないで雇用契約書を別途作る際には、必ず入れなければならない項目があります。
業務内容、雇用形態(アルバイト、契約社員などの名称)
雇用契約の期間(いつからいつまでか、60歳未満の方との契約は最長3年だが、通常は3ヶ月〜1年の間で結ぶことが一般的)
始業や終業の時刻、労働時間などの労働条件
休日、休暇
時間外労働の有無、休日労働の有無
給与、給与の締め日、支払日、昇給の有無
退職に関する事項
更新の有無の明示
更新の判断基準(業務量や勤務成績、態度など)
雇用保険や社会保険の加入の有無
給与や勤務時間などはわかりやすいですが、忘れがちなのは「更新の有無の明示」と「更新の判断基準(業務量や勤務成績、態度など)」。アルバイトや契約社員の雇用形態で勤務しているスタッフは、契約期間が終わりに近づいた場合に、次の更新がなされるのかどうかを気にしていることも多いものです。そうしたことから、これらを明確に定めておく必要がありますので注意しましょう。さらに、上記以外にも定めている項目がある場合についても、明示が必要です。それは、例えば次のような項目です。
退職金や賞与の有無や計算・支払の方法、支払の時期
スタッフ負担の食費、作業用品に関すること
安全・衛生、職業訓練に関すること
災害補償・業務外の傷病扶助に関すること
表彰・制裁に関すること
休職に関すること
万が一、これらの労働条件が、最初スタッフに伝えたものと実態とで違いがあった場合には、採用されたスタッフは店舗との労働契約を即時解除することができるのです。せっかく選考に時間をかけて採用したにもかかわらず、雇用契約が不十分な状態だったために、スタッフとトラブルになるようなことは避けたいですね。
【雇用契約は確実な更新を!】
また、最初に結んだ契約書の契約期間が満了になる場合、勤務条件などの見直しと結び直しをしていますか?先ほどお伝えした更新があって、その判断基準をクリアできるスタッフがいたら、結び直しの段階で面談の機会を設けて、条件を見直した上で新たな雇用契約を交わしましょう。これも、もちろん書面がオススメです。もし、契約期間が満了になったのに、結び直しをしていないといわゆる「自動更新状態」となり、期間を設ける意味がなくなってしまいます。こうなると、いわゆる無期雇用契約(期間の定めのない契約)とみなされてしまうこともあるのです。
採用後も労使ともに安心して経営、勤務できる環境作りのためにも書面による契約を確実に行いましょう。 -
Q:店長です。新しいスタッフの採用も決まり、雇用管理の重要性をより感じています。しかし、具体的にどういうところから取り組んでいけば良いのか、途方にくれています。まず、行っておいた方が良いことは何でしょうか…。
A:スタッフの雇用契約書の作成と締結、36協定の届出、就業規則の作成と届出は完了していますか?法律を単に難しいと敬遠せず、基本的なルールは押さえておきましょう。地道な対応が、トラブル防止につながります。
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<解説>
コンビニエンスストアの経営や運営において、労務管理はとても大切なもの…という言葉、皆さまは何度も聞かれていることと思います。しかし、国のルールである法律が絡む話も多いため、売上を上げるための接客や発注、清掃など店舗オペレーションの改善などに比べて、抵抗を感じる方が多いのも事実です。特に、人の部分で言えば、スタッフの育成、あるいはシフトをどう埋めるかに苦心されながら、労務管理を行うことに二の足を踏んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私も店舗勤務時代には、まさに人繰りに追われていました。ひたすら1週間のシフトをどう埋めて、日々の店舗運営をどうこなしていくかで精一杯。朝8時に出勤して、レジ精算から発注、接客、納品作業を繰り返して気が付けば22時になり、さあいよいよ夜勤スタッフに交代だ!と思ったら、そのスタッフが来ない…ということもありました。
新たなスタッフの採用については、求人広告を見て来る応募者に対して、面接で何を質問すればいいかをそれまでの経験をもとに自分で考えることは出来ました。そこで出来る限り、志望理由で「接客が好きだ」と言った人を採用しようと思い、そうした人を集めていったら、明るい職場にはなったけれども、いわゆる「バックレ」に遭い、信じていたスタッフに裏切られることの辛さを経験しました。極め付けは精算の際、ほとんど使わないレジのお金がキレイに300円合わないな…と思い、確認のために防犯カメラを確認したらスタッフの横領行為を目撃。モニタ画面越しに行われる犯罪行為にショックを受けたこともあります。しかし、そのとき私には何の知識もありませんでしたから、そうした行為をしたスタッフへの対処がわからず、ただ呆然とするばかりでした。
その一方で、一所懸命働いてくれるスタッフも多かったのですが、その中で「休憩を分けて取ってもいいですか?」という質問や、年末近くになって「ダンナの扶養から抜けたくないから、勤務時間を調整させてほしい」という相談があったり、学生スタッフが22時を超えて働くことがなぜダメなのか、ということを知る機会に恵まれたりして、大切なことはすべて実務という形でスタッフから教わることになりました。同時に、自分自身も一従業員として、さまざまな決まりで守られているんだな、ということを実感したものです。
さて、話を元に戻しますと、法律と聞いただけで拒否反応を示す人も多いですが、労働に関する法律は、「労働基準法」をベースに、何十もの数あります。これらを一つ一つ見て、理解し、一気に守っていくことは、正直申し上げて至難の技です。そうなると、まず何から優先的に知り、実践していけば良いか、ということになりますが、私は直接的にスタッフの雇用や勤務に関わる部分から確認し実施、あるいは見直しをしていくことをご提案しています。例えば、「雇用契約は書面で交わす」、「1日8時間、週40時間までが法律で認められている勤務時間で、それ以降に働くと残業扱いになる」とか「残業を行う場合には36協定を事前に出す」、「10人以上のスタッフがいる場合は就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る」こと、「労災保険は一人でもスタッフがいれば加入する必要がある」ことなどです。
もちろん、知っているよ!という内容もたくさんあるとは思いますが、経営者や店長自身が知っていれば良いのではなく、スタッフも知っている必要があるということ、また、知ってはいるけど実施はしていない、は法律違反の観点から最も良くなく、かつリスクが大きいということもお伝えしなければなりません。特に近年はスタッフ自身の生活に関わる部分となると、スタッフも必死で自分の身を守ろうと、本やインターネットで調べて主張してきます。そうした時に、知らない、あるいは出来ていないからといって感情論で応戦してしまっては意味がありません。スタッフは店舗運営上、不可欠な存在であり、スタッフも店舗がないと働けません。彼らの主張にはしっかりと向き合う必要があります。また、彼らの知識も正しい認識とは限りませんから、正しい認識を持って対応しなければ、店舗側が振り回されます。まずは、コンビニエンスストアの店舗経営を行う以上、法律の実務的な部分を捉えて行動に移しましょう。こうした決まりは、自身の店舗を守りスタッフが働きやすい環境を作るためにあるのですから。 -
Q:オーナーです。今度契約期間満了で退職をしてもらう勤続2年11ヶ月のスタッフがいます。しかし、最初に1年ごとの契約を交わしたきりでその後の更新はしていません。問題ないでしょうか。また、当社は社労士に一部業務を依頼しており、助成金も活用していますが、それに影響はしないでしょうか。
A: いわゆる「雇い止め」は、契約期間が終わったら自動的に終わり、というものではありません。場合によっては解雇と同義となり、助成金ももらえなくなることがあります。
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<解説>
今回のテーマは「雇い止め」です。期間の定めのある雇用契約を結んでいるスタッフに対して「もう契約の更新はしません」と伝え、契約更新を行わないことをいいます。実はこの雇い止めに関するトラブルが多く発生しているのです。トラブルになる理由は認識不足からくるものがほとんどです。
通常、ほとんどの店舗では長期雇用を見越したスタッフ採用を行っていると思います。よほど「1ヶ月限定で、絶対に更新しない!」という条件を設定、告知していない限りは、契約更新を繰り返しながら最終的に定着してくれたら…という考えでいる方のほうが多いのではないでしょうか。
少し主題からはそれますが、国としても長期雇用を進めている現状があります。その政策を積極的に進める企業に対して国から受け取れるものが「助成金」です。最近では、コンビニエンスストアでも、助成金を申請する店舗(企業)が目立つようになってきました。例えば、アルバイト・パート(以下「アルバイト」に統一)や契約社員などの「有期雇用契約」から一定期間を経て契約期間の定めのない「正社員」にし、最終的に定着すると受給できる「キャリアアップ助成金」というものがありますが、これはコンビニエンスストアでもチャレンジしやすく、とても人気がある助成金の一つです。内部登用の機会を設けている店舗も多いので、予算があるうちにチャンレジしてみても良いのではないかと思います。
さて、話をもとに戻します。そうした長期雇用を検討する反面、「もし自分と合わないタイプのスタッフだったらどうしよう」という不安や、実際に雇ってみたら、思うように動いてくれない、といった現実に遭遇することもあります。このとき、その対象となるスタッフが正社員など期間の定めのない雇用契約であれば、いきなり解雇は難しいと認識しているオーナーは多いでしょう。しかし、アルバイトの場合、契約期間の終わりが来たら「雇わないこともできる」と安易に考えている人が多いのもまた事実です。しかし、この認識はとても危険です。ここでは、具体的にどういった危険が潜んでいるのかを見ていきます。
①自動更新すると雇い止めは厳しい
この意図するところは、「雇用契約の自動更新は不利になりやすい」ということです。もちろん、最初からその設定を意図的に行っているのであればそれはそれで良いのですが、雇い止めの可能性を考えた際、自動更新制度にしてしまったら、結果的に出来なくなってしまうでしょう。仮にその場合に「次は更新しないよ」と伝えても、意味がありません。
②契約更新をしないと…?
では、自動更新設定でない場合に契約更新をせずに放置してしまうとどうなってしまうのでしょうか。これは、一定の条件が揃ったときに「期間の定めのない雇用契約」と同じ意味であるとみなされてしまうことになります。この一定の条件とは、例えば「雇用契約の更新を3回以上行ったあとに雇い止めを行う場合」や「1年以上の雇用契約で次の更新をしないことを伝えた場合」などが当たります。この状態で雇い止めを行ったら、これは「解雇と同等のものである」と判断されてしまう危険性もあるのです。
例えばスタッフの採用時には、雇用契約を結ぶことに対する意識も高いと思います。しかし、その契約期間が半年や1年など比較的長い期間だと、いつ結んだのかを忘れてしまい、気づけば契約期間がとうに過ぎていた…なんて経験はありませんか?
反対に、採用後のスキルや心構えに不安があると、ついつい短く契約期間を区切ってしまうこともあります。例えば1ヶ月ごとや2ヶ月ごとなど、短すぎるのにも注意が必要です。要は、契約の更新をいちいち行うことが面倒になって、同じく更新のアクションを起こさないようになるのです。これも本末転倒です。
通常、店舗とスタッフ間で署名・捺印を行う「雇用契約書」を取り入れているところが多いかと思いますが(本部推奨の契約書類もサインをもらう形式がほとんどかと思います)、契約期間の満了が近づいてきたときには次の更新に問題がないかを少なくとも1ヶ月以上前に判断しておきましょう。
スタッフの雇い止めをしたと思ったら、結果的に会社都合の解雇とみなされてしまい、チャレンジしていた助成金がもらえなくなってしまうこともあります。なにはともあれ、正しく契約更新を行いたいものです。 -
Q:店長です。ある日、スタッフが通勤途中に滑ってケガをしてしまいました。どうやらアパートの玄関を出て階段を降りているときに滑ったようです。この場合、労災の扱いになるのでしょうか…。
A:店舗(会社)が労災保険に加入していれば、通勤災害として認められる可能性があります。一軒家の場合は玄関を出るまでにケガをしても通勤災害とはなりません。
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<解説>
今回はスタッフが出勤をしようとして、住んでいるアパートの玄関を出て階段を降りようとしたときにふいに滑って転んでしまった…という、なんとも痛ましい出来事が起こった場合の対処についてです。こういう場合にいわゆる労災保険の給付を受ける対象になるのか、という観点で見ていきます。
【「労災」とは何か?】
まず、本題に入る前に「労災」とは何か?ということについて触れましょう。労災は「労働災害」、あるいは「労働者災害補償保険法」の略語です。簡単に言えば、勤務中にケガをしてしまったときや障害が残ったとき、業務が原因となって病気になった場合などに、国から保険給付があります。一度この連載でも触れましたが、スタッフを一人でも雇用した場合には、事業所として必ず入らなければならない公的保険の一つです。保険料は全額店舗側の負担で、コンビニエンスストアの労災保険料率は3/1000(令和4年5月時点、変更の可能性もあります)。保険料の計算にあたっては、1年間に払ったスタッフ給与の総額がベースとなります。仮に年間で2,000万円の給与を支払った場合、労災保険料は6万円です。
【通勤も労災の対象?】
さて、ここまでの内容を踏まえると、通勤途中のケガは勤務中に発生したものではないので、一見関係なさそうに思えますね。ですが、実は労災保険は通勤途中、あるいは帰宅途中も、条件さえ満たしていれば一定の補償があるのです。冒頭のQのようにアパートに住んでいるスタッフが、玄関を出てアパートの敷地を出るまでの間に滑ってケガをした場合、その敷地は不特定多数の人が往来できる場所であることから、通勤の途中であるとみなされ、通勤災害の対象となります。
【どのような補償があるか】
では、もしアパートの玄関を出て、階段を降りる際に滑って転んでしまった場合、労災保険ではどのような給付が受けられるのでしょうか。
ケガの状況にもよりますが、まず、病院に行った際に労災として診てもらうことで、その診療代が「療養給付」として給付されます(一部負担金200円のみ初回に負担あり)。つまり、スタッフの立場としては診療代を払うことなく治療が受けられるというものです。ただしこれは、労災指定病院で診てもらう必要があります。労災指定病院以外では、いったん診療代を立て替え、その後労災請求することでかかった診療費用が返ってくることになるため、あらかじめ店舗近くの労災指定病院を調べておくといいかもしれません。
その他、例えば足の骨折など、ケガでしばらく仕事を休まなければならない場合には、お休みしている間の生活補償として「休業給付」が出ます。休業給付の額はイメージとして、平均賃金(過去3ヶ月の給料の平均)の6割、プラス休業特別支給金として平均賃金の2割が給付されます。さらに、もし1年6ヶ月を経過してもそのケガが治らない…という場合には、傷病年金、障害が残った場合には障害給付というものも出ます。このように、労災保険の給付は手厚いものになっています。
実際に事故が発生したら、専用の書式を使って病院などを経由して行う場合、直接労働基準監督署に請求を行う場合がありますが、速やかに行うことが大切です。ただし、特に通勤時や帰宅時は、寄り道をしてしまうこともあります。通常の出勤・帰宅ルートから大きく外れて寄り道をしてしまった際にケガをしても、通勤災害として認められない場合もあるので注意が必要です。
【通勤災害とならない場合も…】
ちなみに、これが一軒家に住んでいて、玄関から公道に出るまでの間に同じく滑ってケガをした場合は、通勤災害にならないのです。また、集合住宅でもセキュリティがしっかりしたマンションの場合、マンションの総合入口を出るまでの間にケガをしてしまった場合は、通勤災害にならないこともあります。ともに理由は、自宅の玄関から外に出るまでの間のルートは、誰もが自由に出入りできる状況ではないからです。
【事故を発生させないのが第一】
これまで、通勤災害にかかる労災請求などについて見てきましたが、最も大事なことは、こうした事故を発生させない工夫でしょう。例えば、冬ですと雪の日にはスタッフに気をつけて出勤するように伝えるだけでも意識は高まりやすくなります。業務中の事故もそうですが、普段の働きかけや意識でも十分防げますので、各店で対策を立ててみてください。 -
Q:オーナーです。退職を予定している店長が、どうやら競合店に転職する模様。競合に転職するのはダメだと思うのですが、食い止めるにはどうしたらいいでしょうか。
A: 職業選択の自由(日本国憲法第22条)があるので、競合店へ転職することを完全に防ぐことはできないでしょう。ただし、対象者や年数、場所など合理的な範囲で一定の条件をつけた競業禁止の規定を定めることで、有効となることもあります。
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<解説>
自店舗の店長が仕事を辞める、と思ったら、なんと別チェーンの店舗(以下、「競合店」)に店長待遇で行くことになっていた…という話は、実際にも多々起こります。こうしたときに、競合店への転職を阻止、もしくは制限することができるのか?というのは、多くのオーナーにとって気になるところではないでしょうか。それでは、実際にどう対処していけばよいかを見ていきます。
そもそも、なぜ競合店(競合他社)へ行くことがタブー視されやすいのか、ということですが、理由はいくつかあります。例えば、「店舗(現場)のノウハウを持って行かれることを避けたい」「お客様を持って行かれてしまい、売上や利益が少なくなる」「仮に円満退社ではなかった場合に、自店舗の悪口を言いふらされて、こっちに損害が発生するのが困る」などです。コンビニエンスストアは店舗システムが比較的誰でも動かせるように設計されているので、それほど特別な技術を必要とする仕事ではありませんが、それでも自分たちの努力を他社で生かされることを想像すると、あまり気持ちの良いものではない…と思う方もいらっしゃるようです。では、そうした状況において、実際に競合店への転職を制限することは可能なのでしょうか。
【規則なしだと競合店への転職は阻止できない】
まず、競合店への転職について何も規定を設けていない場合は、仮に自店舗の店長が競合店に転職しても、ダメとは言えないでしょう。これは、日本国憲法の第22条にある通り、職業選択の自由が認められているからです。
職業選択の自由とは、
「何人も、公共の福祉に反しない限り、移住、居住、移転及び職業選択の自由を存する」
という内容ですが、公共の福祉、すなわち違法行為を行うことや他人に迷惑をかけないことを前提として、職業を自由に選ぶことができる、あるいは営業ができるのです。だからこそ、自店舗を辞めるときに何も規定がなければ、人やノウハウなどの流出を食い止めることはできないのです。
【では、規則があればいいのか、というと…】
それでは、「当店ではノウハウがもれると困るから規則を設けよう」と、『一度辞めると一生競合店には転職できない』という規定を設けた場合、有効になるのでしょうか。正解は、NO。これも、職業選択の自由が前提です。この決まりは、それを退職者に対し直接的に制限することに繋がってしまうため、この決まり自体が無効と判断される可能性が高いのです。また、退職時の手続きで、退職者に「私は退職後、競合先に転職しないことを誓います」という文書の入った誓約書にサインをさせたとしても、その部分が無効となることもありえます。この内容は、過去にいくつか裁判で争われた事例もありますが、度の行き過ぎた制限は無効となっています。
【限定的、必要最小限にとどめる】
あらかじめ、就業規則や雇用契約書などで、競合店へ転職することを禁じることは、決してダメなことではありません。ただし、先のように極端な制限は、退職する人の人生を制限してしまうことから無効となってしまいます。では、そのさじ加減はどこまでが許されるのでしょうか。
例えば、1年ないし2年という期間を定める(これも長すぎてはダメ、せいぜい2年まで)、場所を限定する(例:同地域と隣地域の競合店は転職禁止、など)、対象者を限定する(店長職については一定の制限を設ける、など)といった限定的な規定であれば、有効となる場合もあります。争いにならなければ有効、無効かどうかの判断は付きにくいですが、競合店への転職による損害発生防止には一定の効果を発揮するでしょう。また、就業規則や雇用契約書で先述のような規定を定めておいたり、契約書や誓約書に退職者がサインをしたりしたとしても、その規定自体が法律で守られているものではありませんので、あくまでも退職者が退職後にトラブルを起こさないための抑止効果として捉える必要があります。ただ、そうした制限を設ける代わりに、金銭面などで待遇を良くする代償措置を取ることも一つの検討事項となり、退職者が受け入れやすくなることもあります。
以上、競合店への転職制限について見てきましたが、何も制限しないなら、転職されてその後トラブルになっても、自店舗には有利に働かない可能性があります。そのため、一定の規定は大事ですが、本来は皆が職業を自由に選択し、お互いに助け合って行ける業界になっていくことを期待したいところです。 -
Q:店長です。人材不足に対応するため、少し前からスタッフによる紹介制度を導入することになりました。紹介した人が採用された場合は一定の報奨金を支払うことにしたのですが、採用した人がすぐに辞めてしまい報奨金が損になってしまいました。法的部分の注意事項も含め、有意義な紹介制度運用のアドバイスを頂けないでしょうか。
A:損や返金トラブルにならないよう、紹介採用後一定期間経過後に報奨金を支払うような仕組みを入れて導入する、紹介した側だけでなく、紹介された側への配慮も必要でしょう。
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<解説>
人不足に悩む店舗も多い中、一つの解決策になりうる「スタッフ紹介制度」。現在店舗で働いているスタッフに知人・友人を紹介してもらうことで質の良い人員を確保できるチャンスが高まり、求人にかかる費用負担を軽減できるというメリットもあります。
スタッフの紹介によって採用が決まった時には、紹介したスタッフ、あるいは採用されたスタッフにも報奨金を出す仕組みにしているところもあります。スタッフにとっても取り組みに熱が入るところですが、紹介によって入社したスタッフが必ずしも定着するわけではありません。もし、店舗として採用時に報奨金を出す仕組みにしていると、定着せずすぐに辞めてしまった場合に、得るものはなし、お金だけが出て行くということになり、店舗としては損です。さらに、そこで「定着しなかったから報奨金を返せ」などとスタッフに言ってしまうと、トラブルになるのは必至です。
そこで今回は、トラブルにならないスタッフ紹介制度運用のポイントを見ていきます。
まず、法的な解釈としてこの制度が問題なく運用できるのか、ということについてお話ししますと、職業安定法という法律で「労働者の募集を行う者に対して報酬を与えること」は原則禁止されています。これは、労働基準法上の中間搾取に当たるからです。しかし例外として、自社のスタッフが募集を行い、そのスタッフに対して賃金という形で紹介報酬を支払うことは認められています。要は、会社などの「業」として紹介事業を行う場合は許可を受けない限り法律違反となりますが、そうでなければ常識的な範囲である限り問題はない、ということになります。なお、労働局としてはこの募集活動も従業員職があっての活動なので、報奨金は労働の対価として支払う「給与所得」としてほしいという指摘があります。手数料の支払いでも法律には触れませんが「雑所得」扱いとなること、年間で20万円を超える場合は確定申告が必要となることから、給与の位置づけとしたほうが良いとされているようです。
【紹介制度運用の3つのポイント】
①日頃から声をかけておく
まず、「身の回りで仕事を探している人がいたら紹介してください」という言葉は、制度として本格的に行う場合でなくても常日頃からスタッフに声をかけておくと良いでしょう。スタッフの知人は、例えば同じ学校や地域に住んでいる人であることも多く、スタッフも自分の知っている人が仲間として加わることで安心感が生まれることもあります。もちろん、紹介してもらった場合でも、面接などの場でしっかりと店舗のコンセプトに合うかどうかの確認は必要です。しかし、労力や時間をかけて探し、紹介してくれたことは間違いないので、感謝の気持ちはしっかり伝えましょう。
②制度をしっかりと構築しよう
そして、もし報奨金を支払うなどの制度として導入を考える場合は、その仕組みをしっかりと構築すること、決まった仕組みは明文化し、スタッフ全員と共有することが大切です。なお、支払い方は現金でも商品券でも給与所得として扱うことになりますが、必ず就業規則への記載を行い届け出ること、さらにスタッフ向けの「紹介制度導入の流れや手引き」、氏名や経験などを簡単に書ける「紹介用シート」、あとは店舗側で管理できる「紹介された方のリスト」を用意しておきます。
紹介制度導入の手引きについては、制度開始時期、使うツール類、採用までのプロセスや採用可否の判断までおおよそかかる日数、報奨金の有無や支給の要件・タイミング、どういう人と一緒に働きたいかの条件などがあり、その他必要に応じて注意事項などを書いておきます。
③報奨金の支払いタイミング
報奨金ですが、スタッフからの紹介を受けて、無事に採用!となったタイミングで支給するところもありますが、その後定着せず、1ヶ月もたたずに退職…ということにもなりかねません。そのため、例えば採用後1ヶ月以上勤務をしていると判断できた際に支給する、というルールにしておくと良いでしょう。この期間は必ずしも1ヶ月でなくても構いませんが、定着するまでには少なくとも給与の一支払い期間をベースに考えておきましょう。
以上、スタッフ紹介制度について見てきました。もちろん、通常の採用活動も大切ですので、並行して行っていくと良いでしょう。 -
Q:店長です。日勤スタッフのAさんとBさんの仲が悪くなり、会うたびに言い合いになるため、お客様や周りへの影響を避けるべく出勤日を分けることにしました。しかし、その話を両名にすると、「なんで私が(シフトを)移動しなければならないんですか?あっちが動けばいいじゃないですか」と譲りません。気づけば、周りを巻き込む大きなトラブルに発展していました。こういう場合、どう対応していけばいいのでしょうか…。
A:小手先の解決策では解決しない問題です。まずは早期解決をはかるために、Aさん、Bさんの状況をヒアリングし、本当の原因を見つけましょう。
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<解説>
コンビニエンスストアは、複数人の力の結集で運営されています。完全な家族経営でない限り第三者が集まる空間ですから、中にはどうしても相性が合わない、という人間関係も出てくるでしょう。今回は、そうした場合の対応方法について見ていきましょう。
まず、これを「対岸の火事」と思わないことが重要です。多くの他人が一緒に働いているので、「ウチはそんなケンカなんてないよ、大丈夫だよ」「みんな仲がいいから心配ないよ」と思っていても、知らないうちに関係のほころびが生まれていることもあります。もちろん、不仲が起こらないように、採用の際に既存スタッフとの相性を配慮したり、普段からコミュニケーションをしっかり取っておく、店舗の目標や方向性を伝えたりするアクションも大事です。しかしここでは、実際に不仲の現象が起こった場合の対応を考えていきます。
【不仲が発生した際の対応のポイント】
①放置しない
スタッフ同士の関係性が悪化していると気づいたら、放置せずにまずAさん、Bさんお互いの話を聞くことからスタートしましょう。初動が遅れると、その分トラブルも悪化しやすくなります。
②「なぜ?」「どうして?」という聞き方はタブー
AさんやBさんから事情を聞く時に、使ってはいけない言葉があります。それは「なぜ?」「どうして?」、英語でいうと「Why?」です。例えばAさんに対し、「どうしてBさんにそういう言い方をしたのかな?」という質問をした際、Aさんは責められているように感じるからです。また、それに対しAさんが言い訳を始めてしまう可能性もあります。
もちろん、受け取り方はそれぞれですが、少しでもその可能性を減らすために、「Why?」ではなく「What?」で質問をするといいでしょう。「Bさんにそう言おうと思った理由は何ですか?」と言うことで、Aさんの本当の理由を導き出しやすくなります。
また、初めからマイナスの話をすると、お互いの気分もあまりいいものではありません。最初に、いつも仕事をしてくれていることへの感謝や労いの言葉からスタートしましょう。もし、スーパーバイザーや他の人が仮にAさんを褒めていたことがあったとしたら、「この前、スーパーバイザーの◯◯さんがAさんのことをすごくしっかりとお客様対応していたと褒めていたよ」というように、第三者の評価を伝えることも良いでしょう。
③安易に小手先の解決策で手を打たない
質問のように、「では、2人を会わせないのが一番!シフトを動かそう」とか「クビにしよう!」などと、経営者や責任者の都合で安易に解決をはかろうとしないことも重要です。不仲の問題は、きっかけはあるにせよ、原因を追求するのは難しいものです。AさんもBさんも、どちらも自分は悪くないと思っている場合に、どちらかが不利益を被る形となると、そこから二次トラブルに発展する恐れがあります。
労働条件の不利益変更を伴う場合は、合理的な理由が客観的に必要です。例えば、AさんとBさんのトラブルは明らかにAさん一方に否があって、ヒアリングの結果、Aさんも反省し、なんとか解決したいと考えている場合や、お互いがシフトを移動させても続けていきたいという合意が取れた場合でなければ難しいでしょう。これも、いきなり提案するから質問のようにこじれてしまうのです。
もしかしたら、他にもいくつか方法があるかもしれません。例えば、AさんとBさんの仲を取り持ち、互いの意見をしっかりと聞き入れ、仕事に反映できそうであれば、それをルールとして設定することもできるでしょう。
最悪のケースはAさん、Bさんのどちらか、あるいは両方が辞めてしまうことです。また、辞めさせるとなる場合も店舗と本人の双方にわだかまりが残る形となってしまうため、時間をある程度費やしてでも、確実に対応することを検討してください。
【まとめ】
相性という避けようのない課題もありますが、人間関係の悪化に対する対応や対策は、法律論というよりは、コミュニケーションや仕組みの改善で快方へ向かう場合も多くあります。最もよくないのは、経営者や責任者が、我関せず、と問題を放置してしまうこと。最初は当人たちの問題であっても、いつの間にか店舗や企業全体に責任が及んでいることもあるので、火種の小さい早期に対応しましょう。 -
Q:店長です。ある日突然、夜勤スタッフAさんから「夜勤のBさんは仕事をサボって寝ている」という申告がありました。そこで、調査をしてみたら、何度も仕事をサボり寝ていることが発覚。Bさんからこの時間分の給与を返してもらうことはできるのでしょうか。
A:事実が確認でき、かつサボった時間の確定を行うことで、一度支払った賃金を返還してもらうことは可能です。ちなみに、罰則による減給を行う場合は労働基準法に注意しましょう。
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<解説>
深夜の時間帯は、ある意味「信用経営」です。オーナーや店長など責任者がいる場合は別ですが、直営店などでは責任者が不在になることも多くあります。そうした時に頼りになるのは夜勤のアルバイトスタッフ。彼らが接客、納品や品出し、清掃、ときにはレジの精算など責任者業務を担い、店舗を切り盛りしていきます。そうしたスタッフに対して、どのように任せていくのかが、経営者や運営責任者としてはとても大切になってきます。
さて、そうした中で、信用していたはずのスタッフが仕事をしないでサボっているという話があった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。
絶対にやってはいけないことは、責任者として「何もしない」ことです。「私もサボっていいんだ」と他のスタッフにも波及する可能性があり、職場環境の悪化を招くだけだからです。
①事実確認を行う
まず、事実確認を行います。例えば、スタッフの証言の他には、防犯カメラをチェックする、店長やオーナー自身の目視確認(ただし、突然訪れるくらいでないと、スタッフもボロを出さないでしょう)などがありますが、一つの方法に満足せず、いくつかの方法を組み合わせながら特定していきます。そして、ある程度状況を掴めたところで、本人と面談しましょう。
面談では、次のような内容を確認します。
・ (事実が確認しきれなかった場合)サボっていたかどうか
・ いつからサボっていたのか
・ サボった時間の特定(シフト表や出勤の実績などを活用しながら)
・ サボって何をしていたのか
・ サボった理由
・ 今後の対策、場合によっては進退も話し合う
面談では一方的に注意せず、できる限り本人から話を聞くようにします。また、高圧的に行くとサボったスタッフが反発をしたり口を閉ざしたりしてしまうため、冷静な対応を維持しましょう。また、その後の対応については、一度面談したから、注意したからと放置せず、「見ているよ」という状況を作ることも必要です。
②事実確認後の賃金返還
状況が特定できた後の対応として、サボったスタッフから一度支払った賃金を返還してもらう場合、仕事を遂行しなかったペナルティとして減給を行う場合、賃金の移動はないが時間帯を変えたり、勤務日数や時間を減らしたり、反省文を書いて提出させたりする場合など、様々な方法があります。ここでは冒頭の質問の通り、サボった時間分の賃金を返還してもらう場合を想定してみましょう。
時給者の場合は、サボった当時の時給を、月給者の場合は月給を月の所定労働時間で割った金額を、サボった時間で掛けた合計を返還してもらうことになります。特に月給者で夜勤スタッフの場合は深夜割増(通常は1.25倍)も加味します。
なお、返還をしてもらう場合に、最新の給与からその分を天引きすることは労働基準法の「賃金の全額払い」に対する違法行為となりますので、よほどそうした規定を就業規則などで盛り込んでいない限り、振り込んでもらうなどの対応が必要です。
【返還対象の期間は法律的にどれくらい?】
サボった期間が1年以上など長期に渡っていた場合、どこまで返還を請求できるのかについては、民法の考え方を基準とすることができるでしょう。
民法167条「債権等の消滅時効」の第1項では「債権は、10年間行使しない場合は消滅する」という条文があり、原則は10年間と考えられます。
【事実確認面談で反発された場合】
サボった本人に事実確認の面談を行う場合は、「サボっている」という確証が持てないとスタッフからの反発に遭います。ただ、確証がある場合にスタッフからの反発があった場合、就業規則があれば懲戒で対応することも可能でしょう。しかし、いきなり懲戒解雇というような対応はトラブルの元です。最初は懲戒の流れに従い、始末書を提出させることから始めましょう。
【ペナルティとしての減給を行う場合の注意点】
実際にサボった分の返還だけでなく、ペナルティとしての減給を行う場合は、サボり1回分の額は平均賃金の1日分の半額まで、月給では10分の1を超えてはいけないという法律上の決まりがありますので、必要以上に引きすぎないよう注意しましょう。
以上、スタッフが仕事をサボった場合の労務対応について見てきましたが、これらは一般的に立証が難しい内容でもあります。何と言っても、こうした問題が起きにくい職場環境を作ること、強固な信頼関係を築いていくことが必要不可欠と言えるでしょう。
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Q:私の店では外国人留学生を何人か雇用しています。とてもよく働いてくれるし「稼ぎたい」と言われるので、長時間のシフトに入ってもらうこともあります。ですが最近、ウチがこの点で違法行為をしている可能性があると聞きました。それってどう違法になるのでしょうか。
A:その留学生は働く許可を持った方でしょうか?また、許可を得ていたとしても、働かせられる時間には制限があります。それを超えて働かせた場合、罰則もありますので注意が必要です。
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<解説>
外国人労働者は年々増えています。厚生労働省の平成27年10月末での「外国人雇用状況の届出状況」を見ると、外国人労働者数は90万人を突破し、過去最高を更新し続けています。また、外国人を雇用している事業所も15万箇所を超え、やはり届出義務化以降最高の結果となっています。2020年にオリンピックが開催される影響で、今後も外国人労働者の増加が見込まれていますが、外国人留学生をスタッフとして雇う場合に気をつけなければならない点はどのようなことかを見ていきます。
【外国人労働者の採用と雇用上の留意点】
①在留資格の種類
日本に滞在する外国人は、日本での労働許可があって初めて働くことが出来ます。在留資格の種類によって、労働できる条件などが変わるのですが、コンビニエンスストアに関わるものとしては「留学」が多いでしょう。ただ、「留学」は本来働けない在留資格であるため、管轄の入国管理局で「資格外活動許可」を受ける必要があります。外国人を採用するときには在留カードの在留資格と、パスポートの資格外活動許可証を必ず確認することが大事です。資格外活動許可を受けていない外国人を雇用し働かせた場合、本人はもちろん、店舗も「不法就労助長罪」として罰則(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)の対象となりますので注意しましょう。
②勤務時間
「留学」の在留資格で、資格外活動許可を受けている場合、コンビニエンスストアのスタッフとして働くことは可能です。しかし、原則28時間以内と勤務時間に制限があるため、シフト作成時に28時間を超えないように注意する必要があります。この時間を超えて働かせた場合についても、①と同じ罰則が店舗側に科せられてしまいます。
ただし、留学先の教育機関(日本語学校、専門学校など)が夏休みなど長期休暇の期間中は、1日8時間まで働かせることが出来るようになっています。
③在留期間や資格外活動許可証の更新時期に注意
在留カードの在留期間内であること、また、資格外活動許可の「許可制限」欄に記載された日付が期限内であることを確認しましょう。一度資格外活動許可を取っても、在留期間の期限が切れて更新を行った場合には、再度資格外活動許可を取る必要があるため注意が必要です。いつの間にか期限が切れ、気づいた時には強制国外退去になっていた…ということがないように、該当のスタッフの在留期間などをチェックし、こまめに働きかけることも管理の一環です。
④採用・退職時の届出
雇用対策法に基づき、外国人スタッフを雇用した場合や、退職する場合には、氏名や在留資格などについて、公共職業安定所(ハローワーク)に届け出ることが義務付けられています。雇用保険の対象になるかならないかによって届出時の書類や期限が異なるため、詳しくは厚生労働省の発行する、外国人雇用のルールについてのパンフレットなどを確認して、確実な届出を行うことが重要です。これを怠ると、30万円以下の罰金が科せられます。
【戦力化のポイント〜日頃からこまめにコミュニケーションを〜】
以上、ここまで外国人スタッフの雇用上の留意点を見て来ました。採用時の届出や労働時間の管理だけきっちり行えば終わりかというと、決してそうではありません。むしろ、彼らを採用してからいかに戦力化していくかが、事業の業績を左右すると言っても過言ではないでしょう。
彼らのほとんどは、慣れない日本語の壁にぶつかったり、文化の違いによるカルチャーショックを受けたりします。しかし、彼らはそれを学び、習得するために日本に来ているのです。
その際、いつもよりゆっくり話す、わかりやすい言葉を使う、粘り強く伝える、という配慮は必要ですが、「外国人だから」とあまり特別扱いせず、業務を教えていくことが大事です。うまく出来たところはしっかりほめ、理解をしようとしない場合は、注意をすることもためらってはいけません。
外国人を積極活用している店舗の多くは、彼らを短期間で戦力化すべく、上記の前向きなコミュニケーションに加え、「期待しているよ」「一緒に学ぼう」という姿勢を経営者だけでなく、全員が意識して実行しています。文化が違うから…と敬遠せず、ぜひこまめにコミュニケーションを取るようにしたいですね。
【図表】在留カードの見方と資格外活動許可の確認
引用:法務省 入国管理局「不法就労防止にご協力ください」
http://www.immi-moj.go.jp/seisaku/pdf/fuhoushurou.pdf
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Q:店長です。当店では各時間帯で朝礼を行っており、勤務開始の10分前に来るようにとスタッフに言っています。あるとき、スタッフから「朝礼は強制ですか。だとすると、給料が発生しますよね」と言われました。これって、やはり給料が発生してしまうのでしょうか。
A:朝礼の参加をスタッフに義務付けた場合は労働時間の扱いとなり、給与の支払い義務が発生します。朝礼は店舗運営力向上のための有効な情報共有手段ですが、労務管理上において、その扱いをはっきりさせておく必要があります。
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<解説>
もっと店を良くしていきたい。その志から、朝礼を導入している店舗も多くあるかと思います。かくいう私も、店舗勤務当時は朝礼を行っていました。勤務開始時刻の10分前に来て、5分以内で準備と着替え、その後5分で朝礼というタイムスケジュールでした。遅れてくるスタッフは遅刻扱いにはしないものの、来るのが当たり前だ、と伝えていましたので、実質的に強制参加に近かったと記憶しています。
ちなみに、今回は朝礼の強制参加がダメ、という話ではなく、いくらスタッフとの同意の上であれ強制にしたら、その時間は労働時間とみなされる、つまり給料が発生する、というお話です。
【労働時間とは何か?】
そこでまず、労働時間とは何か、という少しカタいお話をします。これは、実は法律上で明記された定義はなく、「三菱重工業長崎造船所事件」という裁判が元になり、「使用者の指揮命令下にある時間=労働時間」という考え方が一般的になりました。この事件では、造船所の業務にあたるための安全服への着替えなどが労働時間になるかが争点となりました。最高裁まで争った結果、仕事を進める上で義務付けの強いものについては、定められた業務時間中でなかったとしても会社の指揮命令下にある状態となり、給与支払いの対象になる、と判断されたのです。
これに当てはめると、勤務開始時刻前の朝礼は、5分でも10分でも、強制とした場合には、労働時間の扱いとなります。また、厳密に言うと、ユニフォームへの着替えも、上記の裁判例ほど時間はかからないものの(長くても1分程度)、その管理方法や義務付けの強さから労働時間の扱いとなる場合もあります。パート・アルバイトの場合は、時給の分換算で計算されることになりますが、フルタイムの社員だと、8時間みっちり通常勤務している場合には時間外労働、つまり残業代の扱いになってしまうこともあるのです。
【実務上はどうするか?】
ここまで見てきたことは、オーナーや店長にとって厳しい見方となりますが、ここからはそれを踏まえて実務上、店長として判断するべき選択肢を見ていきます。
①労働時間と認識した上で、朝礼参加を義務付ける
やはり、店舗をより良くしていくための手段として、朝礼での情報共有は有効です。新商品やキャンペーンのお知らせから注意事項まで、直接スタッフの目を見て伝えられるからです。所要時間も5分〜10分程度と短いため、義務付けして、給与も支払う、という選択肢があります。
②朝礼は自由参加、勤務時間中に連絡ノートを読んでもらう
朝礼を強制参加とすると労働時間の扱いとなってしまうのが困る…という場合は、朝礼は自由参加とすることになります。もっとも、自由参加ではなかなか集まりにくいでしょうから、店をより良くしていくために店長からスタッフへ協力を依頼することは可能です。あとは、連絡ノートを活用し、勤務時間中、あるいは自由な意志のもとに確認してもらう、という方法でカバーすることになるでしょう。
③朝礼はしない
もちろん、朝礼をしない、という選択肢もあります。普段のコミュニケーションがしっかり取れるならば、必ず朝礼をやらなければならない、というものでもありません。
【懇親会、イベントなども強制参加の場合は注意】
なお、似たような事例で「懇親会の企画と参加」というものがあります。いわゆる飲み会やスポーツなどの店外イベントです。これも、強制参加とすると、懇親会であっても「指揮命令下にある」となり、労働時間として給与支払いの対象となります。なかなか24時間営業の多いコンビニで強制参加というのも難しい話なので現実的ではないかもしれませんが、企画時にはぜひご注意ください。
【自主的な行動でもメリハリは必要】
一般的に、出勤時刻ギリギリの出勤では実勤務に支障をきたす可能性があります。そのため、余裕を持って店舗に来ること、早く来たらユニフォームに着替えて、連絡ノートを見て…という話になります。これを、自主的にスタッフが行ってくれる場合は、非常に積極的な姿勢でありがたいことなのですが、やはり、店舗としては「どこから労働時間になるのか」をスタッフにしっかりと伝えられると、スタッフも安心ですね。
労使のトラブルはいつも、互いの「曖昧さ」から生まれます。有利か不利か、といった判断の前に、まず正しく知って活用することも大切です。 -
Q:勤務態度がよくないスタッフに注意を繰り返していたのですが、なかなか改善されず、その苛立ちが募ってある時「明日から来なくていい!」とつい言ってしまいました。そうしたら、本当に来なくなってしまいました…。
A:労務管理上ではこの言葉は「理由なき解雇」にあたる危険行為。順序を踏まなければトラブルの元になります。
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<解説>
「明日から来なくていい」。
かつては漫画や雑誌などで、いわゆる「クビになる瞬間」の言葉としてよく出てきていましたが、現実の日本でこの言葉を発すると、トラブルの元になる可能性があります。これについては、まずなぜトラブルになりうるのか、というところを見ていきましょう。
【法的な問題】
例えば、オーナーや店長から「明日から来なくていい」という言葉を発した瞬間、いくつかの法的な問題が生じます。いわゆる、解雇の問題です。具体的に生じる問題としては、次の3つがあります。
①即時解雇の危険性
「明日から来なくていい」ということは、言われた側は「今日で雇用契約は終わりだ」と捉えてしまいます。ただ、即時解雇はよほどの理由がなければ出来ません。仮にそう捉えたスタッフが解雇はおかしい、と訴えてきた場合、店舗側は一気に不利な立場になってしまいます。過去の裁判例でも、解雇後に従業員側から「理不尽な形で解雇された」などと訴えられ、解雇が無効になったケースが出ています。
②解雇理由が不明瞭
それでは、「よほどの理由」とはどういうことなのでしょうか。
法律的に言うと、「客観的に合理的な理由」が必要で、かつその理由が「社会通念上相当」のものでなければ認められないことになります。これをわかりやすく言い換えると、
1:誰が見ても「解雇は仕方ない」という理由であり
2:オーナーなど経営者が何度注意しても改善されず
3:対応としても、もう解雇以外の方法がない
と判断できる場合でなければ、難しいということです。
つまり、スタッフの勤務態度や能力が不足している、という理由だけで「明日から来なくていい」と言っても、先の3つの条件が満たせないため、解雇理由としては不十分なのです。
③手当や賃金の支払い
スタッフの解雇については、法律上さまざまな制限がかかります。例えば、仕事中などで負傷し、または病気で休むことになった場合、その期間と復帰後30日は解雇することができません。また、産前産後の休業期間とその後30日についても同様です。そして解雇の場合には、スタッフには少なくとも30日前に解雇の通知をしなければならず、万が一その30日を切る場合には、不足日数分の解雇予告手当を支払う必要があります。仮に「明日から来なくていい」と言った場合には、30日分支払わなければならなくなるのです。もし毎月20万円を支給していた場合は、約20万円の支払をすることになります。(計算方法は図表を参照ください)
しかも、こういう場合に例えば未払いの給料や残業代があると、一緒に請求をされることもあります。その金額も、膨大なものになってしまうケースすらあるのです。一時の感情…ではないかもしれませんが、勢いに任せて「明日から来なくていい!」と口走ってしまうだけで、その瞬間、さまざまなリスクが発生してしまうことは避けられないでしょう。
【法律上以外の問題】
もちろん、法律上の問題だけではありません。例えば、職場のモチベーションや雰囲気に影響したり、「あそこはすぐ首を切る店らしいよ」などと噂を立てられたりすることもあります。そうなると、オーナーや店長は店舗運営の舵取りをしにくくなってしまうでしょう。
【対策は?】
先ほど、解雇はよほどの理由でなければ認められないとお伝えしました。実際に勤務態度が悪い場合、まずはしっかりと話をする機会を持つことが重要です。なぜそうした態度で勤務するのか、また、どこがいけないのか、という点について、しっかりとヒアリングし伝えます。その上で、何か業務の方法を変えれば改善できるのか、複数店経営であれば、別の店舗で勤務することで改善されるのか、などを検討していきます。それでも改善されない場合に、初めて解雇を含めた「辞める」選択肢を準備していきます。こうした順序が必要であり、綿密なコミュニケーションは必須なのです。
もちろん、勤務態度が悪いからといって、解雇しないほうがいい場合もあります。私がある直営店に赴任した直後、勤務態度でバツがついていたスタッフがいました。上司からは「辞めさせろ」と言われましたが、私は1ヶ月の猶予をもらい、そのスタッフと話を重ねました。結果、態度が悪いように見えたのはそれまでの店長との関わり方に原因があって、信頼関係が築けなかっただけだということがわかりました。1ヶ月後にはリーダーシップを発揮して後輩スタッフを導く存在に成長してくれました。
まずは、いきなり解雇を考えるのではなく、腹を割って話をすることから始めてみませんか?
【図表】
法律上(労働契約法上)の解雇を回避する努力とは
解雇予告
解雇予告手当の計算:直前3ヶ月に支払われた給与総額÷3ヶ月の総日数
総額が月20万円の場合
(20万円×3ヶ月)÷(31日+30日+31日)=約6,600円/日
これに、予告で不足している日数をかけたものになります。
-
Q:自分から退職を申し出たスタッフが、数日後「会社都合の退職にしてほしい」という要望を出してきました。スタッフにとって条件が有利になるらしいからだそうですが、これって断ったほうがいいのでしょうか。
A: 会社(店舗)側が、特にスタッフを辞めさせたわけでないのであれば、断ったほうが良いでしょう。後々トラブルになる可能性もあります。
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<解説>
退職の理由には、大きくわけて2つあります。一つは自己都合退職です。スタッフが自身の理由により「退職します」と言ってくるものです。もう一つが会社都合退職。例えば店舗の閉店により働けなくなった場合や、業績の悪化に伴うリストラ、採用時に提示された労働条件とあまりに違う不利な労働条件で働いたスタッフが退職をするなど、店舗側に要因があってスタッフが退職をする際に会社都合退職となります。
しかし、本来は自己都合退職のはずなのに、ある程度長く勤めたスタッフが突然「会社都合退職にしてほしい」と言ってくることがあります。インターネット上では、「会社都合退職にしてほしいと会社に言いましょう」というサイトが多数存在しており、それを見聞きしたスタッフが「これはいい」ということで、交渉してくるのです。それでは、なぜか会社都合退職になると、スタッフにとって有利になるのでしょうか。
【失業保険の受給条件が大きく違う】
実は、これは雇用保険に入っているスタッフにとっての話なのですが、自己都合退職と会社都合退職とで、大きく条件が変わってくるからなのです。具体的には、図表のとおり、失業保険(正式には失業等給付の基本手当)がもらえる条件やタイミングに大きな違いが出てきます。自己都合退職の場合は最低でも被保険者期間が1年必要であり、退職後、7日間の待機期間のあと、3ヶ月の期間を待ってから失業保険を受け取ることになります。これに対し、会社都合退職の場合は被保険者期間が半年以上でよく、7日の待機期間後、すぐに所定の手続きを経て失業保険を受け取ることができるのです。また、状況によってはもらえるトータルの金額にも違いが出てきます。これは、仮に今の職場を退職してすぐに次の職場が見つからない場合、3ヶ月の支給保留期間があるとその間の生活費を稼ぐ術が限られてしまうことから、不利な条件で退職をすることになった人がもらいやすい仕組みになっているのです。
(一部、自己都合退職であっても条件によっては失業保険を早く受け取れる場合があります)
【会社都合退職は安易に出さない】
自己都合と会社都合の違いでこれだけ有利になるのなら…と、スタッフの申し出に対し、優しいオーナーが快く会社都合退職にすることを見かけるのですが、これは少し待った方が良いです。なぜかというと、会社都合にした、ということは、店舗やそのスタッフにとって不利になる可能性も出てくるからなのです。
最初に店舗の面から見ていきますと、まず、助成金の受給に影響が出てきます。例えば、一定条件のもと、アルバイトや契約社員から正社員に切り替える制度を入れた事業所で一人当たり60万円が受給できる「キャリアアップ助成金」というものがあります。仮にその助成金を活用することになったとしても、会社都合退職を一人でも出した店舗は、退職日以降6ヶ月間助成金を受けることはできません。すでに受けている後に会社都合退職者がいることが発覚した場合には、助成金の返還を求められることもあります。助成金の受給を検討している、あるいは受給申請を進めている場合には注意が必要です。
また、一度でもその状況を許してしまうと、他のスタッフにも知らない間に広がってしまい、次から次へと同じような申し出が来てしまうことにもなりかねません。
それだけでなく、安易に会社都合退職に応じたことで、そのスタッフの採用活動や次の就職先に少なからず不利な影響を与えてしまうこともあります。そうなると、スタッフの次の夢や目標を応援しようと思っていても、真逆の状態を引き起こしてしまいかねません。スタッフが自ら退職を申し出てきた場合は、その理由をヒアリングするとともに、正しい手続きを行うことをお勧めします。
【会社都合なのに自己都合にするのもタブー】
最後に、今回の質問からは少し外れますが、これまでの逆、つまり、会社都合なのに自己都合退職にするのも、当たり前の話ですが危険です。本来は会社都合退職なのに、助成金をもらうためというような理由で勝手に自己都合退職にすると、トラブルの元となります。先述の通り、失業保険の受給にも違いが出てくるため、仮にスタッフがハローワークで「本当は会社都合で辞めさせられたのに、自己都合に変えられた」という話をすると、会社に調査が入ることになります。また、仮にこの手法で助成金を受給することになると、不正受給につながります。
やはり、無用なトラブルを生み出さないためにも、店舗として正直な対応をしていくことが大切ですね。 - Mostra di più